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下村敦史『刑事の慟哭』



『闇に香る嘘』で衝撃の乱歩賞デビューを飾ってから、早5年。
いやぁ、風格出てきました、下村敦史さん!

マスコミが何かと言うと「令和」につなげる今日この頃、
付和雷同しているみたいに聞こえそうなのが嫌だが、言わずにはおれん。
下村敦史こそ、令和のミステリー界を牽引する作家の最右翼だと思う。

はぐれ者的な刑事の、意地とプライドを描いた『刑事の慟哭』は、
双葉社から5月下旬に刊行予定。乞うご期待!



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by dokusho-biyori | 2019-05-05 09:08 | 試し読み | Comments(0)



当「読書日和」の管理人が今、最も推している作家の1人。
奥田亜希子の、1年2ヶ月ぶりの新刊だ~! いやぁ待たされた(笑)。

途中、ヒリヒリとした痛みを感じる描写も多いけど、最後には、
自分の人生と握手できたような、そんな肯定感がじわりと染みてくる。

生き方とか、大事にしてるものとか、譲れない事とか、苦手な事とか、
人と同じじゃなくてもいいんだよね。
そう思わせてくれる、5編の短編集。

胸を張っておすすめします。

奥田亜希子『魔法がとけたあとも』(双葉社/5月下旬発売予定)



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by dokusho-biyori | 2019-05-04 11:02 | 試し読み | Comments(0)

人生色々、悩み無用。

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『世の中それほど不公平じゃない』浅田次郎

『キオスクのキリオ』東直子



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『「行動経済学」人生相談室』ダン・アリエリー 訳=櫻井祐子

『ぼのぼの人生相談』いがらしみきお



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『いきもの人生相談室』今泉忠明、小林百合子、小幡彩貴

『クッキングと人生相談』枝元なほみ 『ビッグイシュー日本版』販売者



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『蛭子能収のゆるゆる人生相談』蛭子能収

『人間の悩み、あの神様はどう答えるか』沖田瑞穂



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『諭吉に訊け!』奥野宣之

『地球で「生きづらいなぁ」と思ったら読む本』オレンジャー



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『「私は自分が好き」と言うことから始めよう』きい

『許斐剛の天衣無縫の人生相談~人生って楽しいじゃん~』許斐剛



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『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』小林昌平

『斎藤一人 絶対、なんとかなる!』斎藤一人



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『安吾人生案内』坂口安吾

『あなたの悩みにおこたえしましょう』信田さよ子



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『末井昭のダイナマイト人生相談』末井昭

『強運の持ち主』瀬尾まいこ



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『高橋ヨシキのサタニック人生相談』高橋ヨシキ

『ジェーン・スー 相談は踊る』TBSラジオ「相談は踊る」



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『中島らもの置き土産 明るい悩み相談室』中島らも、中島さなえ

『中原昌也の人生相談』中原昌也

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『心がスッキリ軽くなる苦手なあの人と付き合わないですむ本』中村将

『本好き女子のお悩み相談室』南陀楼綾繁



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『はっちゃんのなんでもお悩み相談室』八二一

『しんどいオカマのちょっと一杯いかがかしら?』BSディム、shiroika



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『ゆる仏道』ヒフミヨイ

『人間滅亡的人生案内』深沢七郎



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『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』福本伸行、萩原天晴、三好智樹

『生きづらい毎日にそれでいい。実践ノート』細川貂々、水島広子



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『シンプルな人は、いつも幸せ』枡野俊明

『近すぎず、遠すぎず。』枡野俊明



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『人生パンク道場』町田康

『人生相談。』真梨幸子



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『もしも悩みがなかったら』水野敬也、鉄拳

『楽に生きるための人生相談』美輪明宏



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『縄文人に相談だ』望月昭秀

『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』ゆうきゆう、汐街コナ



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『きょうも誰かが悩んでる』読売新聞社



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by dokusho-biyori | 2019-05-03 21:07 | 開催中フェア | Comments(0)

19年05月

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年号のコード進行――文藝春秋営業部 川本悟士

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 大学の頃からの癖ですが、何か原稿を書くことになると、近くの本屋さんを見て回ります。理想では「あ! これでいこう!」とすぐにアイディアが浮かび、手にとった本をスススっと読んで、さらさらと書き出せるのですが、現実はどうもそうはいきません。入ってすぐの平台に置かれている本を見ては「あ、こんな本出てたんだ!」「え、こんな本あるんだ!」と立ち止まってしまってしまいますし、棚の前でも「『聞く力』が売れてたときには一緒に買った『聞き出す力』も熱心に読んでいる学生だったなぁ』と妙に昔を思い出してしまいます。

 ちゃぶ台を返すようなことを言ってしまえば、そもそも本が沢山あるのがよくありません。誘惑に負けてまったく関係のない趣味のものを買ってしまうこともしばしば。花より男子……もとい、花より団子を人生の指針とする私としては、先月はお花見にかこつけていろいろと散財をしてしまったところ。誘惑に負ける前に出なければ……と思っているうちに、気がつけばレジの前に。今月も誘惑に負けてしまった私は、社内の棚を覗くことにしました。

 とはいえそこは出版社。資料室に行けば色んな本があります。テーマがないことにはなかなか絞りきれません。五月にふさわしいもの……5月にふさわしいもの……。うわ言のように漂っていると、こんな本を見つけました。『元号――年号から読み解く日本史』。今回はこの1冊を手にとってみることにします。

 10連休を前に観光ガイドに目移りしながら渋滞予想にめまいがする思いですが、みなさんはどう過ごされたでしょうか。そして、ゴールデンウイークといえば、そろそろ年号が変わって令和になった頃合いですね。個人的には初めて目の当たりにする改元だったので、テレビではヘリコプターで黒塗りの車を追いかける映像が流れたり、インターネット上で誰もいない会見場の様子が中継され続けていたりと、『踊る大○査線』的というか、平凡な言葉ですが映画を見ているような現実感のなさが印象的な四月一日でした。


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 そんな盛り上がりを見せた新年号発表ですが、そもそも年号は古代中国ではじまったものです。日本に伝わってきたのは大体6世紀頃までのこと。日本以外でも周辺地域で使われていたもののようなので、広い意味では「漢字文化」の流れのなかにあるものといってよさそうです。

 日本で初めて公的な年号は「大化の改新」で馴染みのある「大化」ですが、この当時はまだ中国からの影響が強く、周辺諸国も「中華の年号」をそのまま使用するように強制される可能性もあったので、あまり実用例は見つからないようです。一気に変わったのが「大宝」のとき。その頃に出たのが「大宝律令」です。この頃、書類や文書には年次を記すときに年号を用いるように、と決まったんですね。

 こう見ていくと、年号は天皇制と距離の近い時間のはかり方なので、じゃあ徳川家の政治制度だった時代はどうだったのでしょうか。そう思ってページを進めると、どうも改元に伴う「事前調整」があったようです。「年号勘者から提出された年号案を、朝廷内である程度絞り込んだ後、幕府に送って事前に意見を求めることにした」(169頁)というくだりは家康の頃の話とは思えないデジャヴ感が……。

 幕府と朝廷が双方の立場を出しながら折り合わせていくということは、昔の人も色々と現場の人は気を使ったんだろうかなぁ、なんてサラリーマン的な思考に花が咲きます。


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 そんな妄想はさておき、基本的にはこの「朝廷内で年号案を絞り込んで、幕府に提示していく」というフォーマットが幕末まで続いていきますが、幕府の力が弱まっていくと段々とその形式にも変化が現れてきます。「安政の大獄」の「安政」では孝明天皇自身の関与や意向が強く働くようになり、江戸幕府時代最後の年号「慶応」のときにはついに幕府は朝廷に丸投げします。

 そして「明治」の時代になり「明治維新」で幕府側から朝廷側に政治の主人公がうつると、改革のなかで「ひとりの天皇にひとつの年号」という今の形が公式のものとなり、「大正デモクラシー」にうつっていく「大正」の頃には、政府が年号決定の渦のなかに入っていきます。この頃になると、江戸時代以上に今と似たような感触になってきますね。

 こう振り返ってみると、歴史の授業で聞いたワードが確かに年号と結びついているような気がします。決定プロセスを見ていくとより一層そうですが、年号によって天皇という存在が歴史のなかで際立ち、そのときの政治状況、現場の息遣い、そして、脈々と続いてきた人々の時間の流れがあらわになります。

 それは、特に日本という範囲に限られた話ではありません。古代中国の影響ではじまった年号という単位が、日本などの周辺諸国で使われるようになり、中国の古典をベースに積み上げられてきました。それこそ今回は『万葉集』という国書が出典で……と出ていますが、「元ネタの元ネタ」に中国の古典があることは、報道でもいわれています。

 もっといえば、それこそあの「初春の令月にして……」というくだりも、花を見ながらの歌会、いわば今にも続く花見的な東アジアの文化的文脈にのっているような気がします。

 大陸を中心に生まれたものが、それをベースに周辺に響き合い、編曲された形で戻ってきては重奏的に呼応していく……。それが必ずしも〝 Beautiful Harmony 〟かは別にして、結局、私たちはそのような、ある種の「コード進行」の上で踊っているのかもしれません。



残る言葉、沁みるセリフ

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《 二杯目以降は発泡酒。酔ったら酒は皆一緒 》

『新小岩パラダイス』又井健太

 貧乏人ばかりが肩寄せ合って暮らす、新小岩のシェアハウス。そこの住人規約の一つが上記。「発泡酒しか飲めないよ(泣)」と〝 持っていないこと 〟を嘆くのではなく、持っているもので如何に幸せを掴むかを考える、〈 前向きな諦め 〉とでも言うべき陽気さがいい。因みにこの規約、最期の一つは《 来る者拒まず、去る者追わず。ここは地球の停留所 》。身近な幸せを大切にしたくなる本です。



ラストに驚ける話いくつか――丸善津田沼店 沢田史郎

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 中垣拓也は、25歳の新進気鋭の弁護士。或る日、耳に飛び込んできたのは、国民的人気を誇るプロ野球監督の殺害事件。その容疑者として逮捕された宇土健太郎は、かつて共に甲子園を目指したチームメイトだった。依頼を受けた中垣は、躊躇うことなく彼の弁護を引き受ける。

 が、警察の捜査では既に凶器も目撃者も見つかっており、更には、複数の関係者の証言から、宇土には動機もあったとされる絶体絶命。

 果たして中垣は、旧友の無実を証明出来るのか? といった筋立ての、措く能わざるミステリー。

 ……ではあるのだが、この作品、実はもう一つ、青春小説としてのストーリーも併せ持っている。 即ち、中垣がまだ坊主頭の高校球児だった頃。チームのエースだった宇土がその才能を開花させ始めたことで、無名の公立高校にとって絵空事でしかなかった甲子園が、俄かに真実味を帯びてくる。そして今から7年前の夏、中垣たち長崎県立島原北高校野球部は、夢と現実を繋ぐ道程を、じりじりと進み始める。

 という訳で、凶器、目撃者、動機と三拍子揃った崖っぷちの被告人の、無実を如何にして証明するかというリーガルサスペンス。そして、ヘボ野球部の奇跡の快進撃という主旋律に、恋や友情を絡めた青春小説。二つの全く異なるストーリーを交互に読み進んだ末に、実はそれが、巧妙に織り上げられた一枚の生地の裏表だったことを明かされて、僕ら読者は「そういうことだったのか!」と思わず膝を打つ。それが、佐藤青南の『ジャッジメント』だ。

 この作品の何が凄いって、中垣たちが高校生だった頃の描写と、彼らが大人になってそれぞれが社会人として日々を送っている現在の様子と、そのどちらもが、それだけで独立した一遍の小説になり得るクオリティである点だろう。そのクオリティを支えているのが、微に入り細をうがった人物の内面描写、心理描写であるのは間違いない。


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 マスコミの無責任な報道に影響されて、宇土を100%は信じきれない中垣の、自分自身への不安と苛立ち。宇土が、弁護人である自分に隠し事をしていたと知った時の憤り。そして、次の瞬間訪れた悔恨。

《 だが現在の宇土は、紛れもなく被告人だ。身体の自由を奪われ、罪を否認しながらも信用してもらえず、二度と妻のもとに戻れないのではないかと怯える夜を過ごす、弱い立場の人間だ。(略)被告人の信頼を勝ち取るのは、弁護人の仕事だ。義務と言い換えてもいい。友人であることに甘えて、それを怠っていたのかもしれない 》

 こういった胸中の吐露は、高校時代パートでも周密だ。チームの調子が上がらずに思わぬ敗戦を喫したロッカールームでは、宇土と他のチームメイトとの温度差が露呈する。このままチームは空中分解かと、それぞれが不安を抱えていたそんな時期、宇土の母親が重い病気で入院していることが漏れ伝わる。

《 でもな……それでも、おまえ一人で野球はできんとぞ。(略)病気のおふくろさんば勇気づけるための戦いに、おれたちも加勢させてくれんか 》

 そして再び、現代のパート。孤軍奮闘する中垣の電話に、「おい中垣!」と、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

《 水臭いやないか! 》《 おまえと宇土と塚田が困っとるとに、助けんわけにはいかんやろうが 》

 実は宇土は、高校最後の試合の後に、中垣たちに一方的に絶交を宣言している。しかし今は非常事態。高校の頃は高校の頃としてひとまず脇へ措いておいて、島原北高ナインは宇土の為にひと肌脱ごうと久し振りに集結する。

 ならば7年前、彼らはどうして袂を分かったのか? その謎は、現在の裁判の進捗とともに徐々に明らかにされてゆくので、そういった意味で本作品は、法廷サスペンスと青春小説が交互に入れ替わりながら、そのどちらにもミステリーとしての要素を含むという凝った作りになっていて、しかもその両方が最終的には一か所にきれいに収斂するのみならず、読者の視界を涙で滲ませるのだから、もはや曲芸と言っていいのではないか。


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 野球というスポーツを背景に描かれる小説ではあるが、「アウト」「セーフ」「ストライク」「三振」ぐらいの言葉を知っていれば、野球の細かいルールなど分からなくても存分に楽しめる筈。スポーツものをつい敬遠してしまう人にも、無理矢理にでも薦めたい作品だ。

 お次は、もう少しお気軽なミステリー。ってか、もしかしたらミステリーに分類するのは間違いなのかな? 集英社文庫編集部謹製『短編少年』はその名の通り、少年を描いた短編小説が全部で9つ。どんでん返しというほど派手ではなく、謎解きと呼ぶほどの凝った仕掛けも無いけれど、どれもが最後に「あっ」と思わせる結末で、ちょっと癖になる面白さ。

 居並ぶのは伊坂幸太郎、あさのあつこ、佐川光春、朝井リョウ、柳広司、奥田英朗、山崎ナオコーラ、小川糸、石田衣良という9人。

 個人的な印象では、全編を通してトーンが統一されていると言うか、読み味が近いので、お好みの作家が一人か二人いれば、未知の作家の作品もきっと楽しめるのではないかと思う。

 中でもとりわけ印象深かった作品を、幾つかを紹介してみよう。

 あさのあつこの「下野原光一くんについて」は、大学生の円藤季美が、小中学時代を一緒に過ごした下野原光一くんとの思い出を振り返る。

 特別にカッコイイ訳でもない、クラス中の笑いを取るような人気者でもない、だけど5年生の時に一緒に飼育委員になって、ふとしたことから意識するようになったら、それまで何とも感じていなかった例えば声や笑顔やちょっとしたしぐさが、なんだか妙に気になって、無意識の内に光一くんのことばかり考えている……。


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 向こうは、ただの友達としか思っていないだろう。告白する勇気はない。けど、諦める踏ん切りもつかない。だから、ふとした偶然で――例えば、忘れ物を取りに戻った放課後の校舎で――光一くんと二人っきりで話が出来た時のことは、それがとりとめのない雑談であっても、季美の中では、大事にしまっておきたい思い出になる。

 甘過ぎず、淡白過ぎず、絶妙な糖度で描かれるそんな片思いには、初恋ものにありがちなべたつきが無く、恋愛小説が苦手な人も素直に感情移入出来るのではないか。

 佐川光春の「四本のラケット」は、中学校のテニス部で、イジメが始まろうとする気配を敏感に察知した主人公が、イジメる側につくか、それとも巻き添えを覚悟してイジメられる側の味方をするか悩み続ける。終盤、主人公の予想外の機転に、拍手喝采を送りたくなるのは、僕だけではないだろう。

 朝井リョウの「ひからない蛍」は、福祉施設に預けられた小学3年生の太輔の目線。事情あってともに暮らす子供たちの、幼い思い遣りが読む者の涙腺を刺激する。

 太輔は、どうやら虐待らしき環境から保護されたらしいと想像はつくものの、子供視点であるが故に、それ以上の詳細は語られない。描かれるのは、寂しさを懸命に抑え込もうとする太輔の、幼い意地とプライド。

 とは言え、所詮は8歳の子供である。意地にもプライドにも限度がある。太輔が遂に悲しみに押し流されそうになった、まさにその時、施設の子供たちによって彼は、自分が独りぼっちではないという温かさに包まれる。

 読後は、若くして人生の苦渋を味わうことになった少年少女に、どうか幸あれと願わずにはいられない。

 その他、自転車に乗れない小学2年生の男の子と、母親を亡くした従妹の交流を描いた、奥田英朗「夏のアルバム」や、女手一つで自分を育ててくれた母親の、第二の人生の門出に精一杯のエールを贈る中学生、小川糸「僕の太陽」など、短いのに胸に深い余韻を刻む名編ぞろい。読んだ者同士で読後感を語り合っても盛り上がりそう。

 集英社文庫の『短編』シリーズは他に、『短編復活』『~少女』『~学校』などなど、全部で8つも出ているから、読むものに困った時にページをめくってみれば、意外な出会いがあると思う。



永野裕介のスクリーンからこんにちは。

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『ある少年の告白』

 本質的な感情を否定される恐怖。実際にある矯正施設を描いた衝撃的な内容に心を締め付けられました。

 私は大きな勘違いをしていました。アメリカという国は性的指向に寛大だと。お恥ずかしい。アメリカには同性愛を認めないどころか、その指向を矯正する施設が実際にあるという事を。

 この作品の主人公はゲイなのだが、両親がキリスト教徒で聖書を信じる聖書原理主義者。彼らは同性愛を神に対する罪と考えているという事で、息子は凄く思い悩み苦しむ。さらに父が牧師の資格を持つことから、息子は思いを打ち明けられない日々が続く。

 ある日、ある事件が起こるのをキッカケに父にバレ、同性愛を治す施設にブチ込まれる。その施設は、科学的に根拠のない治療をする恐怖の施設でした。という、にわかに信じがたい内容で実話。驚いた……。

 想像してみてほしい、親に人格を否定されたうえに、矯正施設にブチ込まれる事を……。この時点で絶望的な状況だ。そして、施設でのワケわからん治療の数々……。

 唯一の救いは、この原作者の本人が今は幸せに暮らしているという事。しかし、こんなにも精神的にキツイ作品が今まであっただろうか? もしかしたらあったかも知れない。だが、この時代このタイミングで映画化されたのは、世間への警報なのかも知れないと痛感して劇場をあとにした事を忘れないだろう。






新刊案内

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編集後記

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連載四コマ「本屋日和」

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5月のイベントガイド

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by dokusho-biyori | 2019-05-02 22:57 | バックナンバー | Comments(0)

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『誰でもできるロビイング入門』明智カイト

『フラットランド』エドウィン・アボット・アボット 訳=竹内 薫 写真=アイドゥン・ブユクタシ



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『サイバー・インテリジェンス』伊東 寛

『メイカーズ進化論』小笠原 治



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『セイバーメトリクスの落とし穴』お股ニキ

『ルバイヤートの謎』金子民雄



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『日本人が勘違いしているカタカナ英語120』キャサリン・A・クラフト 訳=里中哲彦

『シンギュラリティ・ビジネス』齋藤和紀



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『バカロレア幸福論』坂本尚志

『ファンベース』佐藤尚之



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『プライベートバンカー』杉山智一

『教室内カースト』鈴木 翔



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『ビブリオバトル』谷口忠大

『プロトコールとは何か』寺西千代子



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『カラヤンとフルトヴェングラー』中川右介

『ゴジラとエヴァンゲリオン』長山靖生



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『ネガティブ・ケイパビリティ』帚木蓬生

『アサーション入門』平木典子



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『ポリアモリー』深海菊絵

『アングラマネー』藤井厳喜



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『ソーシャルブレインズ入門』藤井直敬

『インバウンドの衝撃』牧野知弘



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『病気にならない女性は「カタカナ食」を食べない』幕内秀夫

『ユマニチュード』望月 健



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『リバタリアニズム』渡辺 靖



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by dokusho-biyori | 2019-05-01 10:09 | 開催中フェア | Comments(0)