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 本当は、去年の夏に東京医大の女子減点問題が明らかになった時に思い立ったフェアなんですが、改装やらなにやらでバタバタしてるうちに、行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなしということで、こんな時期になってしまいました。

 女性を応援するつもりで組んだフェアですが、改めて振り返ると、むしろ男性にこそ役に立つという本が多いような気がしなくもないです。

 男性でも女性でも、何かに気付いて貰えるフェアになっていたら、至上の喜びです。


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『くらやみガールズトーク』 朱野帰子

『ぬけまいる』 朝井まかて



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『つよく結べ、ポニーテール』 朝倉宏景

『砂に泳ぐ彼女』 飛鳥井 千砂



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『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 訳=くぼたのぞみ

『「女子」という呪い』 雨宮処凛



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『わたしはわたし。そのままを受け止めてくれるか、さもなければ放っといて。』 アルファポリス編集部

『ママがほんとうにしたかったこと』 エリザベス・イーガン 訳=阿尾正子



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『石垣りん詩集』 石垣りん

『永遠の詩 02 茨木のり子』 茨木のり子



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『人形の家』 ヘンリク・イプセン 訳=矢崎源九郎

『上野千鶴子のサバイバル語録』 上野千鶴子



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『リバース&リバース』 奥田亜希子

『「女性活躍」に翻弄される人びと』 奥田祥子



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『男尊女卑という病』 片田珠美

『女の子が自力で生きていくために必要なこと』 ジョン・キム



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『アニバーサリー』 窪 美澄

『孤児列車』 クリスティナ・ベイカー・クライン 訳=田栗美奈子



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『アップルソング』 小手鞠 るい

『独り居の日記』 メー・サートン 訳=武田尚子



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『永田町小町バトル』 西條奈加

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』 西原理恵子



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『この年齢だった!』 酒井順子

『ルーム・オブ・ワンダー』 ジュリアン・サンドレル 訳=高橋 啓



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『ルネサンスの女たち』 塩野七生

『女たちのジハード』 篠田節子



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『白洲正子自伝』 白洲正子

『私は私のままで生きることにした』 キム・スヒョン 訳=吉川南



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『こんなわたしで、ごめんなさい』 平 安寿子

『それでもわたしは山に登る』 田部井淳子



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『オンナの自由』 蝶々

『ダメをみがく』 津村記久子、深澤真紀



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『花桃実桃』 中島京子

『西の魔女が死んだ』 梨木香歩



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『テヘランでロリータを読む』 アーザル・ナフィーシー 訳=市川恵里

『82年生まれ、キム・ジヨン』 チョ・ナムジュ 訳=斎藤真理子



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『ヒョンナムオッパへ』 チョ・ナムジュ、チェ・ウニョン、キム・イソル他 訳=斎藤真理子

『「自分」を仕事にする生き方』 はあちゅう



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『放浪記』 林 芙美子

『白蓮れんれん』 林 真理子



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『独立記念日』 原田マハ

『女ざかり』 丸谷才一



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『蔵』 宮尾登美子

『森のなかの海』 宮本 輝



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『「夢をかなえる」自分になる』 ジーナ・ミュジカ 訳=釘宮律子

『THE LAST GIRL』 ナディア・ムラド、ジェナ・クラジェスキ 訳=吉井智津



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『『青鞜』の冒険』 森 まゆみ

『わたしはマララ』 マララ・ユスフザイ、クリスティーナ・ラム 訳=金原瑞人、西田佳子






by dokusho-biyori | 2019-04-19 19:19 | 開催中フェア | Comments(0)

19年04月

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世界の通勤車窓から――文藝春秋営業部 川本悟士

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 卒業・入学シーズンに桜が咲いていたのも今は昔……そろそろ花びらの舞う時期でしょうか。四月になると何かと変化があるもので、いわゆる新生活といいますか、生活のリズムが変わった人も多いのではないでしょうか。その変化が如実に現れる瞬間はどんなところでしょう。個人的には通勤・通学の移動時間かなぁ、なんて思います。

 私の場合、基本的に移動は自分で動かす乗り物を中心に生活をしてきたので、公共交通機関に毎日必ず2回は乗るようになったのは社会人になってからでした。満員電車――最初は思わずめまいがするかと思いましたが、みなさんはどうでしたか。日本の通勤・通学といえば満員電車を代名詞に、どうしてもいいものという印象は少なくなりますね。でも、そんなときこそ通勤を苦行としてではなく、通勤こそが近代社会の発展を促してきた原動力のひとつであると描いた、こんな本をめくってみるのはどうでしょう。

 イアン・ゲートリー『通勤の社会史』は、通勤という習慣を通して近代社会がどう発展してきたのかを描き出す、一種の世界史本ともいえる1冊です。それによれば、通勤とは仕事場と休息の場を何らかの移動手段によって結びつけることであり、鉄道や自動車などの離れた場所をつなぐ移動手段が誕生するにあわせて生まれてきたものだといいます。

 上記のように、大きなきっかけは鉄道の誕生で、それによって居住と職場とを離した生活スタイルが可能になり、人々が郊外へと移り住んでいくようになりました。19世紀から20世紀にかけて、都会という密集した生活環境のよくないエリアから緑豊かな郊外へと移住をしていく自由が広まっていくことで、いわば職場への移動が「他者と顔を合わせるための準備の時間」を提供してくれるようになり、生まれた土地に縛られたり都会の面倒事に囚われたりしないための手段になったわけです。


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 ただ、当時の鉄道通勤は必ずしも安全なものではありませんでした。月に1度は大規模な事故が起きる命がけの危険なものだったようです。そんななかT型フォードが誕生し、爆発的に自動車が人々の生活に入り込んで、移動の自由を拡大した人々はさらに広範囲に生活圏を広げていきます。アメリカを中心として、企業自体も自動車通勤者に続いて郊外にうつっていきました。

 要するに、通勤は一種の自由というか、制限の少なさによって成立した習慣である、という側面があるようです。その証拠というわけではありませんが、国が住む場所を定めた東側諸国では、必ずしも変化は訪れていませんでした。

 と、こう書くと通勤が万々歳の良いもののようですが、もちろん負の側面もあり、たとえば、自動車での通勤が進むに連れて渋滞が大きな社会の問題になりました。それを解消しようと高速道路やバイパスが建設され、社会は自動車の輸送を大前提としたものへと変貌していきますが、今でもアメリカでは渋滞によってイライラをつのらせたドライバー同士のイザコザが――なまじ銃を持っているだけに大きく拡大した形で暴発して――問題にもなっています。

 とはいえ、アンケートをとると通勤を不快と捉えている人より通勤が楽しいと回答した人のほうが多く、通勤時間を有効に使っている回答が多いようです。実際、通勤によって変わった生活習慣のなかには消費活動も含まれ、たとえば、今でも電車のなかではケータイや本が欠かせないという人が一定数いることはそのひとつかもしれませんし、運転中はラジオ番組をかけっぱなしにするというドライバーの存在もそのひとつでしょう。通勤という活動が広まることで、生活習慣が変わり、娯楽が変わり、時間の流れが変わって人の動きが変わる…そうやって社会が動いていくというわけですね。


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 実際、通勤をなくしてオンライン上で完結しようとすると、セキュリティの問題だけでなく電力をかなり使うことが問題になっているとあげられているように、まだしばらく通勤は馴染みのあるものであり続けるようです。

《 通勤には職場と家庭生活を切り離す効果がある 》(P.316)と著者は述べていますが、たしかにこの感覚、妙に実感としてわかるところがあるもので、イライラするようなことやヘコむようなことがあっても、ハンドルを握って帰っているうちにちょっと頭が冷めてきたり、つり革を片手に文庫本を開いたり音楽を聞いているうちに気持ちが落ち着いたり……ということが、みなさんもご経験あるのではないでしょうか。

 そうやって気持ちを切り替えているうちに、それこそ能町みね子『お話はよく伺っております』であるような、乗り合わせた隣の席の人の会話が妙に面白く聞こえて振り返ったらそれが全部オジサンの独り言だったことがわかってびっくりしたり、いやいやなんでやねんと思わず心のなかでツッコミを入れてしまったり……なんて余裕が、あなたにも生まれるかもしれません。

 4月は、その意味ではいい時期ではないでしょうか。ぼーっと本を読むのもそうですし、窓の外の景色もそう。多くの人の環境が変わった時期、周りを見回すと面白い光景に出会えるかもしれません。そんな通勤時間で出会った何かが職場や学校で出会う誰かとの話題になれば、それはテレビで映る世界中の車窓と同じくらい、あざやかな通勤の車窓だと思います。



残る言葉、沁みるセリフ

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《 ひとは、ふっと弱くなるときも、悪くなるときもあると思うんだ。だれにでもあると思うんだ。 》


 だからと言って何でもかんでも大目に見ろと、主人公は言っている訳ではない。世の中には取り返しのつかない間違いや失敗もある。だけれども〝 取り返し 〟がつくならば、そして本人が悪かったと思っているならば、ミスを見逃さずに糾弾する人よりも、大らかに許してやる人の方が、人間としての器は大きいんじゃないだろうか。自分だっていつ何どき、へまして迷惑をかけないとも限らないんだし。





 超問題作! 倫理観? そんなの関係ねぇ! なタブー作品でした。

 好きな作品の中に、稀に「ニオイ」を感じるものがある。良い匂いを感じる作品は沢山あるが、この作品はその逆。漢字にすると「臭い」の方で、クサくてこの場から逃げたくなる様なニオイ。この臭いをスクリーンから発するこの作品は傑作だと思う。

 ここでストーリーをざっくり簡単に説明すると、生活に困った脚が不自由な兄が自閉症の妹に売春させてギリギリの生活から抜け出そうとする話です。何て不謹慎な作品を紹介してくれてんだ! と怒る人が目に浮かぶが、そうゆう人にこそ観てほしい。暗くなりそうな話を、驚くほど面白可笑しい作品に仕上がっているからです。いや~、まさか自分もこの作風で声を出して笑うとは思いませんでした。

 泥臭く生きるこの兄妹にスポットライトを当てた片山慎三監督は、良い意味で世の中をフラットに見ている凄い貴重な方だと思いました。

 ここでもう一つ、どうしても紹介したい作品があります。デンマークの映画で『THE GUILTY/ギルティ』という作品です。めっっちゃ面白かった!! 今年断トツで好み! 本当はコチラを全面に推して行こうと思ったのだが、変な感想を書いて先入観を与えたくないなと。好きだからこそわかって欲しいこの気持ち。何かすみません(汗)。

 じゃあこれだけ教えちゃう! 「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決します」シンプルな設定だけど、色々予想超えて来るから! 以上。



正義の味方、参上!――丸善津田沼店 沢田史郎

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 言葉を介さずに心と心で直接会話が出来るテレパシー。遠く離れた場所に一瞬で移動できるテレポーテーション。対象に指一本触れることなく念じるだけで物体を動かすサイコキネシスetc。

 最近はめったに見かけなくなったけど、昭和という時代には〈 超能力 〉なるものがかなり頻繁に話題に上っていた記憶がある。恐らく、ユリ・ゲラーのブームも大いに影響したんだろう。スプーン曲げだの念写だのがしばしば雑誌やテレビで特集され、UFO、UMAと並んで超能力は、〝 もしかしたら本当に在るんじゃね? 〟的興奮を以て語られる定番の話題だった。

 とは言え、それはあくまでも小学生男子に限ったブームであって、ウルトラ6兄弟だの戦隊ヒーローだのと同列の、所詮は子供だましの絵空事に過ぎなかった。

 ところが、その〝 子供だまし 〟に真正面から取り組んだ作品が、昭和50年代に立て続けにヒットする。平井和正の『幻魔大戦』聖悠紀の『超人ロック』大友克洋の『AKIRA』……。これらの作品の新しさは、〈 超能力 〉の必殺技的な格好良さではなく、その危険性を提示し、持てるが故の苦悩や代償を描いた、という点だろう。

 即ち右に挙げた名作たちは、超能力の負の部分にスポットを当てることによって、それまでの〝 子供だまし 〟にリアリティの息吹を吹き込み、大人の鑑賞に耐え得るクオリティに仕上げた訳だが、その分、〝 子供だまし 〟には無かったある種の暗さを帯びてゆく。

『超人ロック』で、不老不死の主人公が、「相手の姿は変わらないまま、自分だけが老いていくということに耐えられる人はいない」との理由から、告白された愛を拒絶するというくだりがあるが、〝 持てるが故の苦悩 〟を象徴する場面だろう。


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 しかしここに、そんな暗さとは全く無縁の作品がある。笹本祐一の『妖精作戦』は、右の3作とほぼ同時期に発表され、しかも「超能力など、持ちたくて持ってる訳じゃない」というスタンスも一緒ながら、例の暗さとは一切無縁。っつーか、殆どバカ陽気といってもいいノリの、エンタメ路線一直線。

 夏休み明けの九月の頭。東京都国立市に在る私立星南大付属高校に、1人の女子生徒が転校してくる。その少女・小牧ノブこそが全ての発端。何しろ、未開発ながら途方もなく強力な超能力の持ち主で、その力を利用しようと企む超国家的な秘密組織から追われているのだ。が、それはおいおい判明してゆくことで、我らが主人公である星南大付属2年生の榊くんたちにとっては、かわいい転校生がやって来たなという程度。

 ところがそのノブちゃんが目の前で誘拐されそうになり、マグナムをぶっ放す謎のおっさんがそれを救出するのを目の当たりにして、榊たちは、タダナラヌ事態に巻き込まれつつあるのを自覚する。以降は、時速200キロで大型バイクをかっ飛ばすわ、横須賀沖に停泊している原潜に忍び込むわ、挙句の果てには宇宙船かっぱらって月まで行くんだから、リアリティもへったくれもあったもんじゃない(笑)。

 その半面、主役を務める若者たちの人物造形はやたらとビビッドで、アホだなぁコイツらと苦笑しながらも、ついつい応援せずにはいられない。面白そうなことがあれば後先考えずに首突っ込むし、勉強は嫌いなのに大人を騙す時だけは頭の回転が速くなるし、自分たちなら上手くやれるという根拠の無い自信に満ち満ちているし、「やばい」と気付くのはいつも絶体絶命に追い込まれてからだしetc……。


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 司馬遼太郎が『坂の上の雲』の中で、若き日の秋山真之や正岡子規の軽挙妄動を、こう評している。曰く
《青春というのは、ひまで、ときに死ぬほど退屈で、しかもエネルギッシュで、こまったことにそのエネルギーを知恵が支配していない 》

著者の微苦笑が目に浮かぶような名文であるが、『妖精作戦』の高校生たちもまた、無鉄砲と紙一重の野放しのエネルギーで以て、物語をぐるんぐるん振り回す。

 例えば『ドラえもん』を見ながら「小学生だけでこんなこと出来っこないじゃん」などと冷静なツッコミをする人には、恐らく一生『ドラえもん』の面白さは分からないであろう。それと同様に『妖精作戦』も、数多ある現実離れは笑って愉しむのが読む際のコツ。それさえ出来れば、悪の組織に拉致された罪無き同級生を救うために、無謀な戦いを挑むフツーの高校生たちが、愉快で頼もしい正義の味方に見えてくる筈だ。

 さて、正義の味方と言えば高野和明である。第47回江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『13階段』は、無実が立証されないまま刑の執行を待つ死刑囚の冤罪を晴らすために、主人公たちが命がけの調査に奔走する。

 自殺した幽霊たちが浮かばれない霊となって地上に舞い戻り、100人の自殺志願者たちを救う『幽霊人命救助隊』では、4人の主人公たちはタイトル通りの救助隊となって、自殺志願者たちを翻意させるために四苦八苦する。
《 未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである 》
というセリフに生きる勇気を貰った読者は、私だけではない筈だ。

 このミスと週刊文春で1位を獲得、山田風太郎賞と日本推理作家協会賞を同時受賞した怒涛のハードSF『ジェノサイド』では、中東の内戦で命の綱渡りを続ける傭兵と、日本の大学で薬学を学ぶ学生が、そうとは知らずに人類の未来を脅かす強大な敵と対峙する。


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 こうして改めて振り返ってみると、〝 正義の味方 〟を描いて高野和明と肩を並べる作家はそうはいないと、つくづく思う(だから早く次を書いてくれ)。

 そして今月紹介する『グレイヴディッガー』も、勿論、正義の味方感満載だ。しかも、庶民感覚の等身大で、街のどこかに本当にいそう。

 その正義の味方は、前科数犯の小悪党、八神俊彦、32歳。殺人や婦女暴行などの凶悪犯罪こそ犯していないものの、詐欺や強請りたかりなど、楽して金を儲けるためなら幾らでも他人を犠牲にしてきた人間のクズ。それが、とある事件から改心し、真人間への第一歩として骨髄バンクにドナー登録すると、たちまちHLAの適合患者が見つかって、明後日はいよいよ骨髄移植という晩秋の或る日。

 八神が部屋に戻ってみると、風呂場には悪党仲間の他殺死体。「えっ!? 何なに? なんで?」と思う間もなく部屋になだれ込んできた3人の男たちに問答無用で襲われて、何が何だか分からずに取り敢えず逃げたはいいものの、緊急走行するパトカーのサイレンを耳にしてふと我に返る。「俺の部屋で俺の知り合いが殺されてたんだから、俺が重要参考人として追われることになるんだろうな」と。

 無論、八神が殺した訳ではないのだから、自ら警察に出向いて事情を説明すれば、一度は嫌疑をかけられたとしても、鑑識の結果などからすぐに無実は証明される筈である。件の正体不明のグループから逃れるためにも、その方が賢明だろう。

 だがしかし。どこの誰とも明かされはしないが、八神の骨髄が移植されることになっている白血病患者は既に移植準備の最終段階で、《 大量の抗がん剤投与と放射線治療で、骨の髄が空になってます 》という状態。《 万が一の話だ。俺が六郷総合病院に行きそこねたらどうなる? 》という八神の問いには、医師は断固明言する。《 間違いなく、患者さんの命に関わります 》と。即ち、八神の骨髄を待っている患者を救うためには、警察での取り調べで時間を浪費する訳にはいかないのだ。


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 斯くして八神は、素姓の分からない謎のグループと警察との両方から追われる身となって、東京都北区赤羽から、大田区の六郷まで、23区縦断の逃避行を開始する。

 という辺りまでで最初の20ページほど。以降繰り広げられる耐久レースは、見せ場、山場、読ませどころのつるべ打ち。

 電車や幹線道路は、警察が真っ先に網を張るであろうから使えない。それどころか、タクシー会社やレンタカーの事業所にまで手配の連絡が行き亘っていて、どうやらまともな方法で六郷に行き着くことは諦めた方が良さそうだと、早々に観念した八神は、チャリを盗み、隅田川を泳ぎ渡り、挙句の果ては羽田行きのモノレールの軌道によじ登ってまでして、逃げまくる。

 そのサバイバルゲームだけでも書を伏せること能わざる緊迫感だが、それとは別に、23区内で謎の猟奇連続殺人が発生しており、その謎解きがまたスリリング。無軌道に見える犯行に翻弄されながらも懸命に事件解決を目指す刑事たち。誰が何のために殺人を繰り返すのか、それが話の本筋にどう絡むのか、その推理はまさに乱歩賞作家の面目躍如。

 作中の時間は、驚いたことに僅か20時間ほど。そこに様々な善意と悪意を凝縮して、これほど濃密なミステリーに仕上げる手腕には、きっと誰もが舌を巻く筈。息継ぐ間もなく駆け抜ける460ページを存分にご堪能されたし。

 さて、三つ目の正義の味方は、ぐっと渋めに。海坂藩の下級武士の子、牧文四郎。数え年で15の夏、普請組に勤める父親が、はっきりとした理由も明かされないまま藩から切腹を申し付けられる。牧家は母親と2人でやっと食っていける程度の捨扶持とみすぼらしい長屋をあてがわれ、以後、赦されもせず処罰もされず、飼い殺しのように放置される。

 ところが文四郎が18になった或る日、今度は何の前触れもなく赦免され、禄高も元に戻される。藩の唐突な処置を訝りながらも、ひとまずはほっと胸を撫で下ろした文四郎だったが、やはりそこには、下級藩士には想像もつかないような権力者たちのエゴと欲が吹き荒れており……。


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 言わずと知れた(と書くと「だったら言うな」とつっこまれそうだが)藤沢周平の『蟬しぐれ』。親と子の信頼があり、友情があり、仄かな恋があり、剣術の切磋琢磨があり、陰謀渦巻く権力闘争があり、そして大切な人の絶体絶命を命がけで救い出す正義の闘いがあり……。青春小説のエッセンスを、たった1冊にここまで凝縮した作品は、ジャンルを問わずそうそう見つかるものではないだろう。しかも、何度読んでもその度ごとに新たな発見があり、違った場面で心が震える。

 序盤、幼いヒロインの〝 ふく 〟と文四郎が夜祭りを愉しむつかの間の平穏。理不尽に切腹させられた父の遺骸を大八車に乗せて運ぶ運命の暗転。境遇が変わっても陰日向なく支えてくれる幼馴染。剣術を通して培った友情。自らの危険をも顧みずに助太刀してくれる友との絆。そして、《 バカをやった時代は終わった 》という、子供から大人へと成長することの寂しさ……。


 本作の魅力を語りだせば、誇張抜きで紙数が幾らあっても足りないのだが、もし一つに絞れと言われたら、強大な権力に押し潰される寸前で、身を寄せ合い歯を食いしばって堪える〝 一寸の虫 〟たちの五分の魂。身分も家柄も損得勘定も度外視して〝 どうしても譲る訳にはいかないもの 〟が、きっと誰にでも一つはある。それが何なのかは一切の説明は無いけれど、時代を越えて共有されるべき、生きて行く上で本当に必要なものが、この作品にはそっと忍ばせるようにして書かれているのではないか。それが何なのかは、未だに言葉に出来ずにいるのだけれども。



編集後記

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連載四コマ「本屋日和

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@maruzen_tsudanm



フロアガイド

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4月のイベントガイド

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by dokusho-biyori | 2019-04-02 06:21 | バックナンバー | Comments(0)