2018年 04月 09日 ( 1 )

ミリオンセラーではないけれど

丸善ラゾーナ川崎店と津田沼店の合同フェアです!
a0304335_08003527.jpg


a0304335_08015085.jpg

エラい先生方が上から授ける直木賞ではなく、
ベストセラーばかりが候補に並ぶ本屋大賞でもなく。
それら既存の枠組みからはこぼれ落ちてしまう名作を!
権威や売り上げが「面白さ」とイコールだとは限らない。
受賞歴にも販売部数にも関係無く、好きなものは好きなのだ!
ミリオンセラーには程遠くても、どうしても読んで欲しい作品がある!



a0304335_08020246.jpg

『希望が死んだ夜に』天祢涼
『希望が死んだ夜に』は私が2017年に読んだ本の中でベスト級の作品です。作者である天祢涼さんは第43回メフィスト賞を受賞しデビューされた方です。サスペンスのような残酷な物語や、優しい連作短編集など、多彩な作品を出されております。これからご紹介させていただく『希望が死んだ夜に』は天祢さんが得意としているミステリです。本作は女子中学生によるクラスメート殺人事件を主軸に、捜査パートと容疑者であるクラスメートのエピソードが交互に描かれる作品です。それぞれのパートで容疑者の印象が異なっており、少しずつ違和感が積み上がっていきます。そしてラスト、真相が明かされると同時に、大きな衝撃が登場人物たち、そして読者を襲うのです。登場人物たちが何を思い、何を失い、何を得たのか。涙があふれて止まらない傑作です。ぜひとも手に取ってみて下さい。
ラゾーナ川崎店 野口俊樹



 中学でイジメにあって、一人離れた高校への進学を控えた彩。 心細さから母が以前訪れたという紅茶館へ足を運ぶと、 そこにいたのは若いマスター怜二と灰色のデブ猫。 人を寄せ付けない雰囲気のマスターとなんとも豪快な紅茶の淹れ方に本来の目的を忘れそうになるも、 ひとつずつ言葉にして語りだせば、 静かに聞いていたマスターはポット一杯の紅茶とある言葉を教えてくれる。人との関係のこじれた気持ちをゆるりとほどく、 柔らかな温かい日差しの注ぐ紅茶館〈 くじら亭 〉。 これは温かい紅茶と不器用なマスター、 変わった特技をもつ新人ウェイトレスが背中を押してくれる優しい 居場所のお話。
ラゾーナ川崎店 石黒郁乃



 この方の文章を読んでいるとフワッと宙に浮くような感じがします。そんな不思議な感覚に陥る文章で描かれる少女と女性のお話。4編からなる物語には途中「あれ、この人ってもしかしてあの人?」と明確に答えを持たせていない、読者の想像にお任せな部分があり、それがまたフワフワとちょっとだけ頭の中をファンタジーにされてしまうのです。そんなフワフワの中に甘酸っぱさ、苦み、渋み、辛みなどが散りばめられ、最後にはそれら全てを味わって「ムフフ」と人には見せられない表情にしてくれる小説です。
津田沼店 筧舞



 家族との関係性に全く悩みのない人なんているのだろうか? 血がつながっていてもいなくても、家族だからこそ湧く悲しみや喜びがある。近くにいるからこそ分かることもあれば、いなくなって初めて分かることもある。この『ファミリー・レス』は様々な家族のそんな切ない思いがギュッと詰まった短編集。どの物語も少し不器用で繊細な登場人物たちが魅力的で、奥田亜希子ならではの視点・描写と相俟って、きらきらと輝く天然石のように心の奥の宝箱にしまって、何度もそっと眺めたくなる小説。
津田沼店 安井理絵



 先日本書の文庫版も家にあったはずとだ、普段開かずの扉となっている収納(リビングにある本棚には収まりきらない本を入れていた)を開けたところ驚愕してしまった。なんと奥に5列(縦には3から4列)に渡って文庫本が詰まっているではないか! いつの間に本が増殖してるっ!? 本書を何とか探し出したのはずっと奥の方からだった。思わず何だかこの本を象徴するかのようなその光景にニンマリとしてしまった。本書の内容は本と本が交わり新しい本が生まれる、そんな本についての奇想幻想妄想が入り混じり、圧倒的な想像力と軽妙洒脱な語り口が癖になる、そんな独創的な物語だ。しかしながら、これほど魅力的なのにも関わらず知る人ぞ知る一冊なってしまっているのが何とも口惜しい。書物の浪漫が詰まった壮大なる法螺話であり、世界文学級超絶娯楽幻想小説(つまりは何でもあり)、そんな唯一無二なこの一冊をもっと多くの人に知って貰いたい。
ラゾーナ川崎店 小川英則



 巻末の解説にもくどい程書いたが、小野寺史宜は人びとの〈悲運〉を描く作家である。どの作品でも、予期せぬ〈悲運〉に見舞われた主人公たちは、途惑い、嘆き、打ちひしがれて下を向く。が、彼らはそこでは終わらない。と言うか、彼らの仲間がそこでは終わらせない。本書『リカバリー』でも、陰に陽に支え、励まし、勇気づけてくれる仲間たちに守られて、二人の主人公はどん底から這い上がる。――そうなのだ。小野寺史宜は〈悲運〉を描く作家である。しかしそれ以上に、その悲運に抗う主人公たちにそっと寄り添う〈温もり〉こそが、この作家の一番のアドバンテージではないだろうか。長所も短所も併せ持つごく普通の人々が、仲間のエールを力に変えて逆境から這い上がる姿は、もっと多くの人に読まれていい。因みに、主人公はサッカー選手だけれど、サッカーを知らなくても問題無く楽しめる筈。
津田沼店 沢田史郎



 読めば読むほど、カミは楽しい。チャップリンをして「世界で一番偉大なユーモア作家だ」と言わしめただけある。特に本作はカミの中ではイカレ具合が最高。名探偵が登場、事件を推理して解決、この二要素があれば名探偵物は成立。じゃ、遊ぼうかとこれでもかとしつこくカミは詰め込んでいますので、中身は無茶苦茶。なのに、推理短編集が成立。それは、推理がどんなに突拍子なくても論理が破綻しないから。何故かというと、そこはカミの描く〝 オルメスワールド 〟だから。物理原則から何から何まで違うのです。だから、作中では水中を猛スピードで自転車を潜水服着用で漕ぐことができるのです。ホームズ曰く、不可能なことを排除していって排除しきれないものはどんなにありえないことでも真実なのです。おかしく狂った世界の中でひたすら名探偵オルメスは論理的に事件を解決する。ただ、違う世界の私たちには奇妙に馬鹿馬鹿しく思えるだけ。だから、カミが好き。
ラゾーナ川崎店 石田健



 武士を志す少年佐助の視点を軸に、真田幸村と大坂の陣を物語る歴史長編小説。天才的な戦術家で人並外れた武勇を誇る武将……という描かれ方が多い幸村ですが、本作は史実に近い形で表現されています。実戦経験も少なく外様扱いで周囲の信頼も薄い(オマケに見た目も冴えない)状況を、関ケ原での敗戦による14年間の軟禁生活を経て得た忍耐強さと身分を問わない心配り(部下の名前を全員記憶して声掛けして回る等々)を武器に少しずつ克服し、真田丸の完成・大坂の陣での大活躍へと結びつけていく、新しく親しみやすい幸村像に、とても胸打たれました。現代的で読みやすい文章と緻密さを感じさせる歴史考証が相伴う、歴史小説初心者にもおすすめの傑作です。
ラゾーナ川崎店 市川淳一



 今私が、「誰の脳みそを見てみたい?」と訊かれたら、間違いなくこう答える……「坂元裕二さん」と。小説とかじゃなく申し訳ない。この作品は、テレビドラマのシナリオなのだが、凄い好きだ! この人が考えるセリフは人を魅了する。最近の坂元作品でよく見るのが、4人での食事の場面。この場面を書かせたら、現在坂元さんの右に出る者はいないと思っている。このカルテットでは、〈食事の場面でから揚げにレモンをかけるか問答〉があるのだが、これが秀逸。レモン一つで4人の言い争いが始まるのだが、めちゃめちゃ面白い! 誰もが「あるある~」と思っていた事の答えがそこにあるからだ。更にこの場面で、4人の性格も完璧に表しているのだから驚きだ。人によっては「こんなオシャレなセリフ言わねーよ」「現実味が無いよね~」と思うかもしれない。でも私は声を大にして言いたい。「いいじゃん! 作り物なんだから酔わせてよ!!」と。
津田沼店 永野裕介



 第10回ミステリーズ!新人賞を受賞した著者による連作短編集。どこかとぼけた昆虫マニアの青年の言動と、読み口は軽いのに、ほのかに残るほろ苦い読後感。どことなく泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズを彷彿とさせるなぁ、と思いながら読んでいたら、あとがきでその辺りについても触れられていました。これが初の著書とはいえ、短編としてもよくまとまっていて、これからが期待できる作家さんだと思います。次作が楽しみ。あとは、やはりこれに触れなければならないかと。魞沢泉って初見じゃ読めない。
津田沼店 西尾文惠



 謎の不審死を遂げたライターの元から持ち帰った原稿。それを持ち帰った岩田と、そのコピーを読んだ藤間にも怪異が襲う。〈 ずうのめ人形 〉という都市伝説のようなものは本当のものなのか。少しずつ明らかになっていく意外すぎる真実と、藤間たちが助かるのかが気になって、一気に読み終えてしまう。呪いにかかると見えてくる人形が不気味すぎて思わず読んでいる間時々周りを見まわしてしまった。2015年に日本ホラー小説大賞の大賞作となった『ぼぎわんが、来る』もそうだが、ホラー小説としての面白さ、怖さは勿論だが、ストーリーの途中で視点が変わることで、それまで認識していた物語の世界が全然違う様相を呈してくる書き方がもの凄く上手い。ホラー小説はちょっとなぁ、という人にも、これは小説として読んでみて欲しいと思う。
ラゾーナ川崎店 山田佳世子



「久々にすごい作家がきたぞ」。それは澤村氏のデビュー作『ぼぎわんが、来る』の初読み終了時に思ったこと。書店員といえど、もちろん作家やジャンルの好き嫌いはある。私はホラーやミステリー系が好きということもあり、何気なく手に取った。そして見つけてしまった。もっと話題になっても良いはずなのに、何故なのか……それは3作目の『恐怖小説 キリカ』を読めばわかるであろう。読んだ皆さんが、何故レビューを書くのをためらうのかを。個人的には、某大賞にノミネートされている最近話題のパニックホラーも捨てがたいけど、僅差で『ぼぎわん』だな、うん。
津田沼店 正樂公恵



 この作品、個人的に二つの理由から、印象深い思い出があります。一つは、思い返してみると本当に数少ない、人から勧められて読んだものであること。もう一つは、それが何となく敷居が高いと思い敬遠していた、本格ミステリ、推理小説と呼ばれるジャンルであったことです。名探偵とその親しい知人。不可解な殺人事件と奇妙なメッセージ。事件関係者と緊張感のある会話。そして名探偵の推理と、犯人の解明。少なくとも、そうしたミステリと聞いて想像するイメージのカタチが、この作品の中には色濃く見えたように感じました。何分ミステリには不慣れなため、内容に触れることが上手くできず心苦しいのですが、個人的にミステリを勧めるならば、真っ先に思いつく作品であることは確かであります。
ラゾーナ川崎店 新海航太



 皆様、〈 友達 〉はどれくらいいますか? 小さな頃は一緒に遊んだら名前を知らなくても友達! ってこと多かったような気がします。 今はオンラインゲームやSNSでの繋がりで、 本名は知らないけど友達! って人も多いかもしれませんね。 じゃあ、今まで友達ってどうやって作ってたっけ? 『1bit Heart』では、天才的な才能があるからか、 人から気味悪がられる笑顔のひきこもり少年・ ナナシと記憶喪失の謎の少女・ ミサネが〈 友達 〉というたいせつなものを作るため、 街中を歩きまわり、 街中に拡がるトラブルを解決してまわるお話です。 いわゆるチートと言われるようなナナシ少年に友達は出来るのか? 謎の少女ミサネの正体とは? トラブルを拡げている黒幕の正体とは? コミカルでテンポの良い友達作り、 ぜひとも心のツッコミをお供に見届けてください!
ラゾーナ川崎店 石黒郁乃



 丸善で働いてもうすぐ丸4年になる。5年目に突入だ。その間に未読だった作品も読むようになり、好きな作家が増えた。その中で、ダントツに好きなのが中山智幸である。難読症のユノという少年の話である『暗号のポラリス』。中山智幸の最高傑作だ。意外なキッカケからベストセラーが誕生する昨今。この作品も、ちょっとしたキッカケさえあればベストセラーになる力はきっとある。しかし、過去作は文庫化されてない。何故だ。重版も未定。何故だ。何故なんだ! 過去作はhonto with(※)で北海道と沖縄からゲット。いや、でも文庫化してくれ。

honto withには取り寄せサービスがあります。出版社に在庫がなくても他店に在庫があれば、ご利用店舗に取り寄せする事が可能な場合もございます。是非ご利用ください。
津田沼店 正樂公恵



 一見して埒外の怪異と呼ばれるモノに、科学的、論理的手法で対峙する。これはそんな、一風変わった物語です。そしてタイトルの〈 0能者 〉。いうまでもなく〈 霊能者 〉に引っ掛けたものですが、その由来は特殊な力を一切持たない主人公が、蔑称としてそう呼ばれているところからきています。しかし、なぜ蔑称なのか。それはこの主人公が、始終口と性格の悪さを遺憾なく発揮するからであり、そのくせ腕はすこぶる立つ。つまりはやっかみを受けての蔑称というわけです。個人的にはその言動と、シメるところはシメる手腕は、実に痛快で、一押しのポイントでもあるわけなのですが。口と性格が悪い主人公の活躍をお求めの方に、是非お勧めしたく思います。
ラゾーナ川崎店 新海航太



 いま、メディアにも紹介され注目を浴びている韓国文学からお薦めの一冊。視力を失いつつある男性と言葉を話せなくなった女性。過去に大きな喪失を体験した二人は古典ギリシャ語の講師と受講生として出会う。 「する」(能動態)でも「される」(受動態)でもない(中動態)。その文法がかつて存在した古典ギリシャ語が二人を繋ぐ。それぞれの深い沈黙と孤独の人生。深海にいる二人の切実な言葉たちを水面からそっと耳を傾けて目を凝らし、ゆっくりと掬い上げるように読みふけりました。読後の儚なさに胸が苦しくなりましたが、それ以上に静謐で美しい余韻が待っています。言葉とは何か。その言葉を紡ぐ文学とは何か。ハン・ガンさんの温かく切ない詩的な文体と斎藤真理子さんの繊細で心地よい文章に訳された喪失と再生の物語。答えなどない(中動態)のようなどちらともいえない不確かな時間が流れるなかで、光あふれる瞬間をじっくりと感じてみてください。
ラゾーナ川崎店 石田愛佳



 大切な人の命を残酷なやり口で奪われ、それを実行した犯人は捕まったものの、不自然に刑が軽い……。こんな理不尽な出来事あったらあなたはどうしますか? ――復讐。恐らく大半の人が考えるであろう行為。それを犯人が未成年であっても容赦なく冷酷にやってのけるのが本作の主人公です。只只復讐を果たしていく主人公に私達は何を感じるのか……。
津田沼店 筧舞



 映画は観て感じるもの……。もちろんそうだ! ところがどうだろう? 時々観終わった後に、なんだこの作品? 訳分かんね~と感じたことはないだろうか。そういった作品を含む、ここ2、3年の作品を映画評論家の町山さんが解説してくれます。特に自分が好きなのは『メッセージ』という作品の解説。この作品はテッド・チャンの「あなたの人生の物語」という短編小説が原作で異星人とのファーストコンタクトがとても丁寧に描かれている。そして、それだけでは終わらないのがこの作品。かなり深いところまで描いていて、「時間・死・言葉」とは何か? というメッセージがビンビン伝わってくる作品になっている。なので途中、この作品を「何か胡散臭いこと言ってんな~」と思う人がいるかも知れない。そんな時、この本が助けてくれます。そして、更にこの作品を好きになることでしょう。他にもたくさんの作品を色々な角度から解説してくれているので、とても助かる一冊になています。
津田沼店 永野裕介



『帝都探偵絵図』のシリーズが一番知名度があるとは思うのですが、それ以外の作品どれもおすすめ、ということで。いわゆる作家推しです。少し不思議な、やわらかくて暖かい世界観と、そこに生きる、心に傷を抱えながらも前に進もうとする強い人たち。ちょっと疲れた心にじんわりと優しさが浸透していく、そんなミステリーを書く作家さんです。あと、タイトルセンスが個人的にとても好み。『金木犀二十四区』なんて、タイトルから金木犀の香りが立ちのぼってきそうで、それだけで幸せな気持ちになります(金木犀好き)。
津田沼店 西尾文惠



 いつの間にか戦争が始まり、実感のないまま確実に戦死者が増えていく。そして自分もいつの間にか戦争に関わっていく。この静かな怖さ。となり町との戦争という今の日本では奇想天外と思われる設定が、緻密な描写によりその世界観に引き込まれ、まんざら遠い世界・未来ではないと思えてくる。自分が直接被害に遭わない限り、眼を逸らしてしまいがちな世の中の汚い・怖い部分。だが眼を逸らし続けてしまえば、このような世界が現実になる。自分を戒めるためにも何度も読み返していきたい一冊。
津田沼店 安井理絵



 美奈川護さんは文章と物語のテンポや空気感が魅力的な作家さんです。第16回電撃小説大賞金賞を受賞し、現在十以上の作品を出されています。芸術や仕事などを主軸に、登場人物たちの心情を丁寧に描き出す作品が多いです。これからご紹介させていただく『ギンカムロ』もそんな優しい作品の一つです。本作は主人公の実家である煙火所を舞台に、花火師たちを描いた作品です。実家から逃げ出しながら花火に未練を持つ主人公、独り身で花火の世界に飛び込んだ風間絢。彼らが個人打ち上げ花火の依頼の中で、お客様の心情に触れ、花火を通して自身に気付いていく連作短編集です。様々な種類がある花火ですが、音や色、花火の製法などなど、様々な要因が各短編に散りばめられ、そっと登場人物に寄り添います。浮かび上がる心情は決して劇的なものではなく、だからこそ深く心を揺り動かします。一編一編が愛おしくなる、魅力的な物語です。ぜひ手に取ってみて下さい。
ラゾーナ川崎店 野口俊樹



 僕ら平凡なる一般庶民は大抵の場合、〈奇跡〉とは無縁に暮らしている。今日は昨日の延長だし、明日は今日の延長だし、来年は今年の延長だ。きっと同じ延長線上に、10年後も20年後も連なっている。だけれども、長い人生で一度くらいなら〈奇跡〉に出遭えるかも知れない。そう思わせてくれるのが、山本甲士だ。或いは、既に訪れている小さな〈奇跡〉を見逃しているだけかも知れない。そう気付かせてくれるのが、山本甲士だ。誰の日常にも起こり得る、珍しくもない「ひろいもの」。それが呼び寄せるちょっとした縁。その縁をきっかけにして、胸の中で錆びついていた歯車がゆっくりと回り始める――。そんなに上手くいく訳ないだろ、だって? いやいや、天は自ら助ける者を助く、と言うではないか。僕らの平凡な日常にも、小さな〈奇跡〉が埋もれているかも知れないぞ。そんな幸福な読後感を、もっともっとたくさんの人に味わって欲しい。
津田沼店 沢田史郎



 シェイクスピアの時代から連綿と続くイギリスのユーモア文学の現在を代表する作家がデイヴィット・ロッジ。完全なる私見ですが、ロッジはすごいんです。小説であるがゆえに可能であるユーモア表現。その代表作が、本書『交換教授』。アメリカ的マッチョを体現する切れ者のザップ教授と斜陽の帝国イギリスを象徴する保守的消極的で実績なしの講師のスワローが、互いの大学の客員教授として立場を交換。風土も文化も違う場所にお互いポンと放り投げられてしまうことから不条理劇が始まるのですが、これが楽しい。ウーマンリブや学生運動の狂乱の中、妻をも含む他者と自分の相互不理解の喜劇。カフカを軽―く親切にした感じなので安心して楽しめます。特に作中本『小説を書こう』をキーとする一連の笑いは見事。文字表現だからこそです。読後、作中にでてくる「屈辱」というゲームは文学好きなら是非ともやってみたくなります。非常に露悪趣味ですが。
ラゾーナ川崎店 石田健



a0304335_09183241.jpg






[PR]
by dokusho-biyori | 2018-04-09 09:23 | 過去のフェア | Comments(0)


「読書日和」備忘録


by dokusho-biyori

更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

全体
ごあいさつ
バックナンバー
本屋日和2018
本屋日和2017
本屋日和2016
本屋日和2015
本屋日和2012~2014
開催中フェア
過去のフェア
試し読み
残る言葉沁みるセリフ2018
残る言葉沁みるセリフ2017
サワダのひとりごと
未分類