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幽霊ピアニスト事件

いやはや、やっと読める。ここんとこ、優先しなきゃならんゲラや新刊が溜まってて、なかなか既刊に手が回らなかったでござるが、漸く、少し余裕が出来た。

そもそもは4年前。『この世の涯てまで、よろしく』(フレドゥン・キアンプール/酒寄進一 訳)という翻訳小説。知ってる著者でもなく、誰かに薦められた訳でもなく、ただ何となく手にとっただけなのにやめられず、その年に読んだ翻訳ものではぶっちぎりの面白さ。

四方八方に無理に貸して読ませているうちに行方知れずになっていて、読み直したくなって買い直そうと思った時には、憐れ版元品切れ重版未定。

なんだよもうといじけていた今年の8月、文庫の新刊予定を確認していたら、“ 50年前に死んだ青年ピアニストが現代に甦り云々 ” という『幽霊ピアニスト事件』なる新刊が! もしかしてと思ったら案の定、『この世の涯てまで、よろしく』を改題した文庫でありました! ぱちぱちぱち。

個人的には単行本のタイトルが好きだったんだけど、文庫の方が内容の想像がつきやすくていいのかも知れませんね。

その内容ですが、主人公は1949年にベルリンで死んだ筈の29歳のピアニスト。本人にも理由が判らないまま、気がついたら1999年のハノーファーのカフェでコーヒーを飲んでいる!? なんだなんだ?? とびっくりしたアルトゥアというこの若者、次の瞬間にはコーヒーの代金が払えるかどうかを心配したりして、冷静っつーかズレてるっつーか。

で、なんの為に生き返ったのかも、これからどうすればいいのかも分からぬまま途方に暮れて、たまたま出逢った音楽学校の学生に、頭がおかしいと思われるのを半ば覚悟しながら「実は、50年前から蘇ったんだけど、助けてくれ」と告白すると、「まじで!? すっげーじゃん!! みんなに紹介するから寮においでよ、キャッホーッ!」みたいな、めったやたらと軽いノリ(笑)。

以降、繰り広げられる学生たちのドタバタ騒ぎと、ミステリー。そしてラストは、簡単には忘れられないレベルの切なさが……。

いやぁ、久し振りに読み返して今30ページ。早く読み進めたいんだけど読み進めるのが勿体ないでござる。
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by dokusho-biyori | 2015-11-14 23:14 | サワダのひとりごと