14年01月

なんでか知らんが、リュウグウノツカイ。
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『暗殺教室』松井優征 集英社ジャンプコミックス 9784088705965(① 巻) ¥420
 12/27 第7巻堂々発売! 乞うご期待!

号令と共に教室を満たす銃声! 椚ヶ丘中学校3年E組は生徒全員が先生の命を狙う暗殺教室。教師と生徒、標的と暗殺者の異常な日常が始まる――!!
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ご紹介させていただく作品は、この度「このマンガがすごい2014」第1位を獲得しました『暗殺教室』です。

まずタイトルから内容が推理できないこの作品。
よかったら表紙も見てください。ますます訳がわかりません。

ある日、謎の超生物によって月が7割消滅しました。その謎の超生物は1年後には地球も滅ぼすと宣言。さらには何故か椚ヶ丘学園3年E組の担任教師に就くことを要求します。世界中の政府は対策を練りますが全く効果なし。仕方なく3年E組の生徒達に巨額の報酬金を提示して謎の生物の暗殺を依頼します。

椚ヶ丘学園3年E組。落ちこぼれが集まる、通称「エンドのE組」
突然自分のクラスの担任の先生が地球を滅ぼす謎の生物になった上に暗殺を任された生徒達。
生徒達はその日から先生を殺すための中学生兼暗殺者となり、勉強に暗殺に励みます。

しかし地球を破壊しうる能力とパワーを持つ謎の超生物はそう簡単には殺せません。
ついたあだ名が殺せない先生で“殺せんせー”。
なにしろマッハ20で空も飛べるし分身したり脱皮したり粘液出したりできちゃいます。水が苦手で巨乳でキレイなお姉さんとスイーツが好き。見た目はタコみたいで触手がいっぱい。でも地球生まれ、地球育ち。さすが超生物、謎だらけです。

落ちこぼれのE組生徒は成績優秀な一般生徒と隔離され、ボロ校舎で授業を受け、差別や誹謗・中傷などあらゆる嫌がらせに耐えながら学校生活を送っています。
しかし殺せんせーが来てからは自信を取り戻し、成績も向上、個々の得意分野を生かし今まで自分達を見下してきた奴等に立ち向かうのです。
もちろん暗殺業も忘れていません。
特技や知識であれこれ策を練り、訓練で身に付けた技で先生に挑みます。

暗殺という言葉から最近はやり(?)のパニックホラー的な人間を殺したり殺されたり、殺人シーンで血飛沫ブシャーみたいなものを想像していた方、先入観を捨ててください。

立派な学園コメディー(暗殺付き)です!!

学校行事(もちろん暗殺付き)もちゃんとありますし、巨乳の美人教師(ハニートラップが得意なプロの殺し屋)が赴任してきたり、転校生(デジタル美少女と自称先生の弟)だってやって来ます。
ほら、なんて楽しそうな学校生活!

暗殺を通じ、殺せんせーを通じ、学習し成長する生徒達。
ちょっと……いやかなり非日常な生活だけど殺せんせーが担任の教室なら通ってみたくなるはず。

卒業までに先生を殺せるのか、先生が隠している秘密は何なのか、E組は落ちこぼれのレッテルを払拭できるのか、次の新刊の表紙はどう来るか、読めば読むほど先が楽しみな作品です。

個人的に作者の松井優征さんの凄さは、演出方法だと思っています。人間が持っている汚さや醜さなど歪んだ悪の部分を「絵」で一瞬で表現してしまいます。
もはや人間とは言えない悪の姿は、キャラクターの言動以上に「こいつムカつくな」とか「人間て怖いな」と嫌悪感を抱くほど。でもどこかユーモアもあるその演出方法は独特で、ジャンプ漫画の概念が吹っ飛びます。
(前作『魔人探偵脳噛ネウロ』は当時その演出の斬新さで話題になりました。興味を持った方はこちらも是非【宣伝】)
ちなみに人間だけではなく、テスト問題は擬人化ならぬ、擬モンスター化します。
こういう表現の巧妙さは見所のひとつだと思います。

さぁ、あなたも暗殺教室に通ってみませんか?
殺せんせーが新たな暗殺者を待っていますよ。(翁川里紗)

『櫛挽道守』木内昇 集英社 9784087715446 ¥1,680

 幕末の木曽、薮原宿。才に溢れる父の背中を追いかけ、一人の少女が櫛挽職人を目指す。周囲の無理解や時代の荒波に翻弄されながらも、ひたむきに、まっすぐに生きる姿を描き出す、感動の長編時代小説。(集英社HPより)
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まるで冷たい雪の中で長い間耐え忍び、やがてとけ始めたその雪の間から、凛と美しい花を咲かせたような。そんな小説だと思った。
これほどひたむきで、強い想いをずっと持ち続けることはたやすいことではない。
ましてや、登瀬の生きるこの時代では、男は表(社会や作業場)女は裏(台所)と決まっていてそこに例外はない。
それは現代人の私たちには想像もできないほど強い力で、ない、のだと思う。
でもこの少女は負けないのだ。決して無理に抗ったりするわけではないが、職人である父の技を目で見、耳で聞いてただひたすら体にしみこませてゆく。
その様は何不自由なく生きて、ぬるま湯につかりっぱなしの御身には痛いくらいにかっこよく映った。

いや、まてまて、、まずは櫛挽とはなんぞや、というところから説明しなくては!
少なくともわたしはまずタイトルが読めなかった、、、。〝 くしひきちもり 〟と読みます。意味は読んで字のごとし、櫛挽く道を守るということだと思われます。
昔の櫛はすべて竹や柘植などの木材を用いて、職人が手作りしていた。
もちろんプラスティックなどない時代、特殊な鋸を使い、一つ一つ同じ感覚で歯(髪を梳く部分)を作ってゆく。単純な作業のようだけど、目の細かい繊細なものを作るには長い長い修練が必要な一つの匠の技だった。
要するに櫛づくりのことを櫛挽きという。
櫛というと、まずは髪を梳くものという印象だけれど、毎日髪を洗うことなどできなかった時代、それは地肌の汚れを梳るもの(必需品)でもあり、きれいな着物などなかなか着ることのできなかった娘たちにとっては、髪に飾ってつけることもできるお洒落の道具(贅沢品)でもあった。
櫛を挽かせたら、村一番という父の背中を見て育った登瀬は自分も櫛職人になりたい気持ちを抑えられない。しかし、女は男を支えるもの。
許されるのは櫛磨きだけで、あとは勝手を手伝うように母親からは終止こつこつと圧力がかかってくる。
でも救われるのは、職人の父が登瀬を黙認しているところ。
決して自ら何か教えることはないけれど、学ぶことを妨げることもない。
まさに職人!という姿がまたかっこいい。

さて、実は物語は一人の少女の夢追いそれだけではない。
家族は大切にしていた跡取り息子を、突然亡くしてしまい、それを機に少しずつバラバラになっていってしまう。その描写は家族といっても少しの誤解や、すれ違いでどんどん離れていってしまうのだということが手に取るようでこわい。
ありえそうなのだ。とっても。
そして、息子直助には家族も知らなかった秘密があった、、、、。

どうです、読み応えありそうでしょう。
登瀬の想い、父の想い、直助の想い、母の想い、妹の想い、すべての人たちの想いが本当にひたむきで胸をうつ。
わたしは今櫛を挽く音というのがどういうものなのか、とても気になっている。
その音には生きるリズムが込められているような気がするのだ。(酒井七海)

『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』角幡唯介 集英社 9784087815061 ¥1,890

 地図なき世界と戦い帰らなかった人々を追う――。極地探検史上最大の謎、129人全員が行方を絶ったフランクリン探検隊。北西航路発見を果たせず全滅したとされるが、アグルーカと呼ばれる生き残りがいた? 人間の生と死をめぐる力強い物語!(集英社HPより)

『空白の五マイル』角幡唯介 集英社文庫 9784087468823 ¥630

 現代の冒険界に期待の新星現る!! チベット、ツアンポー川流域に「空白の五マイル」と呼ばれる場所があった──。その伝説の地を求めて、命の危険も顧みず冒険に出る。開高賞ほか数々の賞を受賞した若き冒険作家のデビュー作。(集英社HPより)

『雪男は向こうからやって来た』角幡唯介 集英社文庫 9784087451405 ¥651

 ヒマラヤ山中に棲むという謎の雪男、その捜索に情熱を燃やす人々がいる。捜索隊に誘われた著者は60日間にわたる捜索期間の中で、雪男を探す彼らの奇妙な体験談に引き込まれてゆく。(集英社HPより)
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 それにしてもまぁ、登山家だの冒険家だのと呼ばれる人たちは、なぜこうも自ら好んで困難な状況に跳び込んで、生死の境で綱渡りをしたがるんだろうね? 世界初の五大陸最高峰登頂や北極点単独行など、数々の実績を刻んだ後マッキンリーに消えた植村直己氏を筆頭に、新田次郎作品のモデルになった加藤文太郎氏や芳野満彦氏、沢木耕太郎さんが『凍』(新潮文庫)で描いた山野井泰史・妙子夫妻などなど、名前を挙げだすとキリが無い。皆々、凍傷で指を失ったり崖から落ちて怪我したり熊に襲われたり雪崩に巻き込まれたり、「命からがら」という目に何度も遭いながら、懲りずにまた行く。で、また「命からがら」な目に遭う。何故なんだ? 恐怖とか不安とか諦めとか、そういう感覚麻痺してるのか?

 ってな疑問が、『アグルーカの行方』を読んでまた一つ増えましたよ。著者の角幡唯介さんは、早稲田大学探検部の出身というから、『幻獣ムベンベを追え』(集英社)や『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)の高野秀行さんの後輩だ(因みに、冒険小説の大御所・船戸与一さんは高野さんの更に先輩)。
 で、在学中からあっちの山に登ったりこっちの谷に落っこちたりしていたらしいんですが、今回(2011年3月)選んだ冒険先は、北極。

 なんでも19世紀にヨーロッパで北極探検が流行した時期があったらしくて、直接の目的は北極海からベーリング海峡を抜けてアジアまでの最短航路を探すことだったそうな。最終的には、南極点初到達で有名なノルウェーのアムンゼンが二十世紀初頭になって漸く成功するんだけど、それまでの数十年間で幾多の犠牲を伴ったのは、こういった地理的探検のお約束。中でもとりわけ酷かったのが、1845年にイギリスを出発したフランクリン隊。足かけ三年にも及ぶ探検で、ナント、隊員129人が全滅したというからナンマンダブ。
( ーノー)o/"Ω ポクポクポク…
 そのフランクリン隊の旅の様子を角幡さんは、資料を駆使して詳細に再現してくれていて、そもそも氷点下30℃だの40℃だのというだけできっぱりと人類の進入を拒んでいる地域だと思うんだけど、それに加えて当時はまだ地図も無かった上に船のエンジンはたったの20馬力って、現代なら250ccのスクーターと同じ出力ですよ。さぁ皆さん、スクーターのエンジンを船に積み替えて、地図も持たず(勿論GPSも使わず)に、北極海に突っ込む勇気がありますか? 私なら、どんなに金を積まれても嫌ですね。

 ところが、ここで「行ってみたい!」と思っちゃったのが角幡さん。〝 全滅したフランクリン隊に何があったのか知りたい 〟 って、わざわざ行かなくたって寒くて凍え死んだに決まってるじゃん! とは考えないのか? しかも、スノーモービルどころか犬橇すら使わずに、冬の凍った北極海を徒歩で横断しようだなんて、冒険家ってのはバカなのか?? 
 本書ではそんな破天荒な旅の様子が詳細に語られている訳なんだけど、書かれている事実がいちいち常識を越えているから一度読みだしたら止まらない。乱氷地帯では3時間で500メートルしか進めないこともざらって、冒険って言うより苦行じゃん! とか、「昨日は氷点下30℃で寒かったけど、今日は氷点下10℃で暖かい」って、どっちにしても冷凍庫より寒いってことですよね? そんな環境で暖かいもへったくれもあるんでしょうか? などとツッコミつつ読了した、1,600km、103日間の北極圏横断記。勿論行間には、行った者だけが実感し得る問答無用の説得力も溢れていて、例えば北極のとある島で越冬していたフランクリン隊が夏を待たずに旅を再開した理由について、角幡さんが
【春がやって来た。もしかしたら、ただそれだけのことではなかったか】
と推測する場面などは、百の理屈を並べられるよりも素直に納得出来てしまうのは、私だけではないだろう。

 とまぁ、我々庶民には到底経験出来ないししたくもないあれやこれやを、コタツでぬくぬくとホットワインなんぞを飲みながら疑似体験出来てしまうのがノンフィクションのいいところ。その上、角幡さんの文章はユーモラスで明るいだけでなく論旨明瞭でびっくりするぐらい読み易いから、『空白の五マイル』と『雪男は向こうからやってきた』も立て続けに読了してしまったではないですか!

『空白の五マイル』は、第8回開高健ノンフィクション賞に加えて、第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞まで受賞したデビュー作。〝 地上で唯一残された 〟 と言っても過言ではない地理的未確認地帯、チベットのツアンポー峡谷を世界で初めて踏査した仰天ノンフィクション。崖から落ちたり道に迷って飢え死にしかけたり高所ではお約束の凍傷になったりと、めちゃくちゃヘヴィな単独行にも関わらず、語り口がどこかコミカルで押しつけがましい悲壮感とは全く無縁。例えば、もしかしたら物凄い大発見なのかも知れない洞穴を見つけた時のことを、角幡さんはこう振り返る。
【だが今考えると、ホクドルンの洞穴が何かを意味するのか、もしくは何も意味しないのか、そんなことはどうでもいいことだったのかもしれない。(中略)あるのは、私はそこに行ったのだという事実だけであり、たしかなのは、私にとってホクドルンというところが特別な場所になったということだけだった】
「冒険」とは何か。その一つの答えが、本書には在ると思う。

 で、もう一つ。『雪男は向こうからやって来た』は、遠路はるばるヒマラヤまで雪男を探しに行くという、如何にも早大探検部的な匂いがする冗談みたいなタイトルだけど、いやはやどうして、読んでいると次第にこちらまで「雪男っって本当にいるかも」という気になって来るから不思議なもんです。
 考えて見ればアフリカのマルミミゾウとかローランドゴリラの発見は十九世紀に入ってからだし、あの白黒のジャイアントパンダの発見も1869年。沖縄のヤンバルテナガコガネに至っては、昆虫マニアの間で噂にはなっていたもののその存在は半ばUMA(Unidentified Mysterious Animal=未確認動物)扱いで、正式に発見されたのは1983年と言うからほんのついこのあいだことではないですか。ってことは即ち、この地球上には未知の生物がまだまだ沢山いるということで、まして雪男の生息域は人跡稀の見本のようなヒマラヤの山中である。今まで「発見」されなかったのは無理も無いし、今後「発見」されることが無いとは、誰にも断言出来ないのではあるまいか。
 などと空想を膨らませつつ、夏場のヒルの大発生だの冬の雪崩だのといった辺境チックな描写も併せて堪能。ほんと、行きたくないけど読むのは愉しい角幡作品。早くまたどっか行って、トンデモナイ冒険譚を聞かせてくれるのが待ち遠しい限りでござる。(沢田史郎)

(*`▽´*) (∩.∩) ┐(´ー)┌ (*´∀`) (*`▽´*) (∩.∩) ┐(´ー)┌ (*´∀`) 

以下、出版情報は『読書日和 01月号』製作時のもです。タイトル、価格、発売日など変更になっているかも知れませんので、ご注意ください。
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編集後記
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連載四コマ『本屋日和』 今月はチョー内輪ネタ(笑)
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by dokusho-biyori | 2013-12-25 21:17 | バックナンバー | Comments(0)