読書日和

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「読書日和」備忘録

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もうね、がちゃがちゃとご託を並べるのはやめよう。
著者名とタイトルだけ言えば、期待していい作品か否か、
きっとみんな判るだろう。
 
住野よる最新刊、『よるのばけもの』
 
12月9日、双葉社から発売予定!!
 
 
 
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by dokusho-biyori | 2016-11-19 08:21 | 試し読み | Comments(0)

朗報二つ

① 『ロボット・イン・ザ・ガーデン』 5刷決定!
 
いやぁ、映像化無し、メジャーな新聞雑誌での書評無し(何故だ?)、芸能人がツイートするなどの突発的なパブも無し。しかもイギリスの新人作家で知名度も無し。もう、無い無い尽くしなのに5刷ってのは、訳文や表紙もふくめた「作品の力」そのものでしょう。いやぁ立派立派。
(゜∇゜ノノ”☆(゜∇゜ノノ”☆(゜∇゜ノノ”☆パチパチパチ!!!
 
 
② 住野よる最新刊『よるのばけもの』(双葉社)試し読み
 
『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』 の住野よる氏の3作目。『よるのばけもの』(12/9発売予定)の試し読み、許可出ました! 双葉社、太っ腹。近日中に店頭配布&ブログ掲載、始めます。乞うご期待。

















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by dokusho-biyori | 2016-11-19 00:22 | サワダのひとりごと | Comments(0)
さぁ、川口俊和さんの2作目だ!
即ち、『コーヒーが冷めないうちに』の第二弾だ!!

場所は勿論、喫茶店「フニクリフニクラ」
カウンターの中には、マスターの時田流と従姉妹の時田数。
そして、例の席にはあの幽霊。

これにて舞台は整った。
『この嘘がばれないうちに』は
2017年2月発売予定で進行中。
乞うご期待!


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第一弾『コーヒーが冷めないうちに』の試し読みはこちら




















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by dokusho-biyori | 2016-11-13 10:25 | 試し読み | Comments(0)
来年(2017)2月頃を目指して準備中らしいよ。
店頭で、試し読み小冊子配布中なう。

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by dokusho-biyori | 2016-11-11 21:17 | サワダのひとりごと | Comments(0)
御用とお急ぎでない方は、さぁお立ち会い!

原田マハさんと言えば、『楽園のカンヴァス』を筆頭に、
『カフーを待ちわびて』とか『キネマの神様』とか『永遠をさがしに』とか、
今年2016も『暗幕のゲルニカ』とか『リーチ先生』とか、
良作傑作を連発していて代表作を一つに絞るのが難しいくらいな訳ですが。

ではそのマさんの『独立記念日』という短編集は、皆さん、ご存知ですか?
年齢も職業も様々な二十数人の女性たちの新しいチャレンジを描いた連作で、
これが、読めば誰もが勇気を貰える素敵な作品!

その『独立記念日』が、この度、装いも新たに大重版されまして、
これを機に、発売元のPHP研究所の二人プラス不肖・沢田が
作品の魅力を存分に語り合いました。

読書日和の出し抜け企画、『独立記念日』座談会、はじまりはじまり。

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沢田
さてお疲れ様です。本日お集まり頂いたのは、三人で原田マハさんの連作短編集『独立記念日』(PHP文芸文庫)の魅力を語り合おうと。

井上
自社本の中でも、特に好きな作品の一つです。

沢田
私もこないだ初めて読んで、なんだこの傑作は! と。書店員として、こういう本はもっと世に知らしめねばならん、と。

兼田
そうまで言って頂けると、編集者冥利に尽きます。

沢田
まぁそんな訳で、まずは軽く自己紹介から。

井上
PHP研究所第一普及本部の井上明日香と申します。簡単に言えば営業職で、丸善津田沼店さんも担当させて頂いております。本日は宜しくお願い致します。

兼田
PHP研究所文藝出版部の兼田将成と申します。この度の『独立記念日』の編集を担当致しました。担当した作品の魅力を編集者自らが語る機会などそうそう無いので、本日は嬉しい反面、おこがましいような気もします。

沢田
そして私、丸善津田沼店の沢田史郎が、進行役も務めさせて頂きます。宜しくお願い致します。
早速ですが、装丁が変わりましたね。

兼田
はい。ゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」という作品です。原田マハさん曰く「大好きなゴッホの作品の中で、もっとも明るく美しい一点を、『独立記念日』の表紙に選びました」とのことです。

沢田
透明感のある青が売り場で映えそうだ。

兼田
「花咲くアーモンドの木の枝」は、ゴッホが、自分の弟に子供が誕生したことがきっかけで描かれた絵画です。「新しい命の誕生」「再生」といった意味が込められています。

井上
様々な立場の女性たちが再スタートを切る『独立記念日』に、まさにぴったりですね!

沢田
で、まずは未読の方の為に、この作品の大雑把な説明が要ると思うんですが。

井上
作中、とある編集者がまさに『独立記念日』という書籍を担当するくだりがありますが、そこでは《 会社とか家族とか恋愛とか、現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集 》と言ってますね。

兼田
文庫の表4(裏表紙)には、こんな紹介を入れました。
《 恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失……。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る――。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集 》
 
沢田
では、その24の短編の中で、特に印象に残ったのは?

井上
16話目の「おでき」です。

沢田
喫茶店でバイトする大学生の話だ。

井上
地元から大学進学のために上京していたり、私と共通した点が多くて、自分のことを思い出しながら読みました。

沢田
あ、地元どこなの?

井上
私、広島県出身なんです。東京に行きたい! と意気込んで大学進学の際に一人で上京してきたのですが、何か辛いことや悲しいことがあると故郷にいる家族のもとに帰りたくなっていました。

沢田
帰るところがあるって、いいよね。「おでき」は、一人で東京に出ていった次女を遠くから見守る母親の姿が、描写は殆ど無いのに読者に想像させるよね。あれが凄いなぁと思った。なんか、さだまさしの『案山子』を彷彿させられた。
♪ 元気でいるか 街には慣れたか 友だちできたか 寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る~
って、歌わせんなよ(笑)。兼田さんの好きな短編は?

兼田
やはり「幸せの青くもない鳥」でしょうか。この短編は、半分以上が、私の実体験がベースになっているお話なので、思い入れが強いですね。

沢田
え、マジで!? どういうこと?

兼田
北関東のとある町の社会人バスケットボールチームの監督さんをスポーツ・ノンフィクション作家の先生と訪問取材することになったんです。それで、その日の午後、駅に着いて、監督のご自宅にうかがう住宅街の中で、その作家の先生が、「兼田さん、肩にインコがとまってますよ!」って。

沢田
何だそりゃ(笑)。

兼田
「えっ!?」って自分の肩を見たら黄色いインコが! もうびっくりでしたよ。驚きのあまり「ワッ」っと追い払ってしまったんですが、何度追い払っても私の肩に戻ってくるんですよ。そうこうしているうちに監督さんのお宅に着いてしまい、肩に乗せたまま「はじめまして、ご連絡差し上げたPHP研究所の……」とご挨拶しました。

井上
マンガみたいですね(笑)。

兼田
もう、監督さんは、本当に「コイツ何?」って顔をしていましたね。

沢田
そりゃそうだろうね(笑)。

兼田
事情を説明したのち、一旦、監督宅で預かろうかという話も出たんですが、「止まった場所で放せば、インコも飼われていた家にとんで帰るのでは?」ということになり、私が放しに行ったんです。で、せっかくだから記念に、左肩のインコを携帯のカメラで写真に撮ろうって(笑)。

井上
何の記念ですか(笑)。

兼田
そしたら携帯の液晶画面の中に白い軍手がパッと伸びてきて――。「うちのインコです。どうしてあなたが?」と男性に声をかけられました。なんとその方が、インコの飼い主だったんです! なんでも会社を休んで朝から探していたそうです。

沢田
マンガみたいだ(笑)。

兼田
聞けば、同居していたお祖母さんが、朝布団を干そうとしたら、籠に布団が当たって、インコが逃げたらしいんですね。もう、お孫さんが泣いて泣いて仕方がなかったそうで、お父さんであるその男性は朝から探しまわっていたとのことでした。

沢田
お孫さん、喜んだろうねぇ(笑)。

兼田
インコを飼われていたご家族とは今でも年賀状のやり取りがありますし、あの黄色いインコが私の肩に止まった翌日に、弊社刊『利休にたずねよ』(山本兼一 著)が直木賞を受賞したという吉報が舞い込んだので、「あれは幸せの黄色いハンカチならぬ、幸せの黄色いインコだったんだね」と今でも編集長と語り合っています。

井上
本当に、「幸せの青くもない鳥」ですね

兼田
「雪の気配」も好きな短編のひとつです。

沢田
「雪の気配」は、バーテンとしてのキャリアをスタートさせる女性が、人生をカクテルになぞらえる場面があるじゃないですか。

兼田
《 人生、甘くない。苦いし辛いし酸っぱいし、けっこうとんでもない。でも、そういう味をちょっとずつブレンドするからこそ、美味しくなるのよね 》という部分ですね。

沢田
そうそう、それ。いいセリフですよね。

井上
沢田さんは、どの短編がお好きなんですか?

沢田
この短編集、つまらない話が一つも無いから難しいんだけど、頭から読み進めて最初に「あれ!? この本、傑作かも」と思ったのは「真冬の花束」だなぁ。

井上
イジメが絡む、結構、重苦しいお話ですよね。

兼田
主人公は高校の教師で、担任するクラスで一人の女子生徒がどうもイジメの標的になってる気配がある……という、かなり難しい立場ですね。しかも、自分自身も子どもの頃にイジメに遭った体験があるという……。

沢田
イジメられていた中学生時代の回想シーンで、14個のつぼみを持つ菊の花が、或る日いっぺんに開く場面。通勤の車内で読んでて、ズシンと響いた。《 ただそれだけのことだったのに、私は涙した。小さなつぼみが開いただけなのに、私の世界はその瞬間に変った。そんな瞬間が誰にだって訪れる。それは真紀にも等しく訪れるのだ、と教えたかった 》って、ここだけ抜き出しても未読の人には何のことだか分からないだろうけど、読みながら主人公と一緒になって、真紀に向かって声援を送っていた。

兼田
一応、未読の方向けに説明すると、真紀というのが、主人公が担任するクラスでイジメられているっぽい生徒ですね。

沢田
その真紀ちゃんが、主人公にメールするじゃない、武者小路実篤の詩の解釈をめぐって。その何度目かで主人公が《 『正解』思わずつぶやいた。ついでに小さくガッツポーズまでしてしまった 》っていうここの場面で、おいらも本当に小さくガッツポーズしたくなったよ。「ヨッシャ!」って。真紀ちゃん、頑張れ! って。


⇒後編に続く

















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by dokusho-biyori | 2016-11-09 09:39 | 開催中フェア | Comments(0)
⇒前編から続く
 
 
兼田
好きな場面と言えば、私は「空っぽの時間」の中の、ラストシーンが好きです。《 楽しみじゃない? 一から始められるなんて。すごいじゃない? 誰にも頼らないなんて 》という言葉に、連載の原稿をいただいた時、ぱっと目の前が明るくなるような感覚を覚えました。

井上
失業保険を貰いながら次の道を探ってる元同僚に、主人公が言うセリフですね。

沢田
こういう、価値観の大逆転みたいなのって、この作品集のテーマの一つだと思うんです。災い転じて福と為すっつーか、人間万事、塞翁が馬みたいな。

井上
なるほど、そうかもしれないですね。
私は「おでき」の中の、《 特効薬はたぶん、故郷にあるんだ 》というセリフがとても印象に残っています。
実家が東京の友達に「地元(故郷)があるっていいよね」と言われるたびに、「いやいや、実家が東京なの羨ましいよ」と思っていましたが、『独立記念日』のこの箇所を読んで、「故郷があってよかったなあ」という気持ちになりました。これも一つの、価値観の逆転ですよね。

沢田
そう言われて、ふと思ったんだけど、同じ「価値観の逆転」でも2種類あることに気がついた。一つは今井上さんが言ったみたいな、「隣りの芝生は青いと思ってたけど、振り向いて見れば自分の庭も捨てたもんじゃないかも」っていう、何て言うか、他人との比較の上の話。

兼田
第1話の「川向うの駅まで」などは、その典型ですね。川向うの街は、自分が住む町に比べて、なんてオシャレであかぬけているんだろう、と。

沢田
もう一つは完全に自分の中で閉じてる価値観で、例えば第2話の「月とパンケーキ」なんかはこれですね。亭主に先立たれて子どもも亡くして、私は幸せとは無縁なんだって。

井上
どちらのケースも、実際はそうとは限らないと言うか、この先に幸せなことが起こるかも知れないのに、自分で勝手に諦めちゃってる感じなんですよね。

兼田
ただ、生きていく上で悪いことが重なると、「自分はどうせ幸せにはなれない」という気になってしまう時も、誰だってあると思うんです。

沢田
或いは、今がツラいと、周囲の人たちが皆ラクで幸せで楽しげに見えてきたり。「よその会社はボーナスいっぱい貰えていいなぁ」とかね。

井上
そんな時にこの本の主人公たちは、ちょっとしたきっかけから「あれ? 私、それほど不幸じゃないのかも」と気付くんですよね。

沢田
そのきっかけってのが、些細な――ここで言う「些細な」ってのは「周りから見れば」という意味で、本人にとっては決して「些細」ではないのかもしれないけど、とにかく思いがけないことから、自分の未来をもう一度信じてみる気になる、そのプロセスが本当に素敵だし、読者を勇気づけてくれる小説だと思う。

兼田
壁にぶつかって、視野狭窄に陥っているような時にも、一歩下がって眺めれば、その壁は案外低いかもしれませんし、実は壁の端っこに穴が空いていてそこから突破できる、なんてことが見えてくるかもしれませんしね。

井上
あ、深いですね。メモしておきます(笑)。

沢田
第6話「転がる石」で、色々行き詰ってしまった主人公に心療内科の先生が助言しますけど、あれと一緒ですね。
《 『案ずるより産むが易し』ってことわざ、知ってますか? こんなことしたら、こうなっちゃうんじゃないか。こう言ったら、こう言い返されるんじゃないか。そう考えてなかなか行動できない。けど、思い切ってやってみれば、けっこう想像もしなかったほうに、物事っていうのは転がっていくものですよ 》
 
兼田
そういう意味では、この本は頑張ってる女性だけでなく、例えば新生活が始まって新しい職場や学校に戸惑いを覚えている人たちにも、是非読んで貰いたいですね。

井上
私はこの本を読み終えたとき、中高時代の友人に読んでもらいたいなと思いました。

沢田
と言うと?

井上
この間久しぶりに中高時代の友人数名と会う機会があったのですが、みんな様々な悩みを抱えていることに驚いたんです。学生時代は同じ環境で生きていて、抱える悩みも友人関係とか勉強とか似たようなものだったのに、進学したり就職したりそれぞれの道を歩くようになって、みんな様々な壁にぶつかりながら頑張っているんだなあと感慨深くなりました。

沢田
太宰治が「東京八景」の中で、こんなこと言ってるよ。《 人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか 》
 
兼田
辛い思いや悲しい経験も、「あの日があって良かった」と後からそう振り返ることができるようになれば、きっとその日が「独立記念日」に変わって行くのかもしれませんね。

沢田
お、井上さん、メモりなよ(笑)。

兼田
あれ? 話していて思ったけれど、ということは「過去は変えられない」なんて言いますが、確かに、起こった事象を変えることはできないけれど、それをどう受け取るかは変えることができますね。

沢田
あ、それは実感あるわ。もう10年以上前の話だから言っちゃうけど、めちゃくちゃ売れる大規模店から、もっとこじんまりした、売り上げ規模で三分の一程度の店に異動になったことがあって、当初は凄く気落ちしたし、何しろ売り上げ冊数も金額も一気に小さくなったから張り合いが無くって、モチベーションをどこに見つけたらいいか分からなくって苦しんだんだ。

井上
沢田さんにもそんな時代があったんですね。驚きました。

沢田
うん。でも、今はあって良かったと思ってるの。

兼田
それはまたどうして?

沢田
いや、大型店に勤務してる頃のおいら、店の集客力で売っているだけなのに、それを自分の力だと勘違いしまくっていて、自分のことをめっちゃ仕事が出来る書店員だと思ってたの、いやマジで(笑)。だけど、異動先の店では、やっぱりその店の身の丈でしか売り上げを上げられない訳じゃん。
「なんだ、俺が凄いから売れてると思ってたけど、あれ全部、俺の実力じゃなくて店の集客力じゃんか」
って、その時気付いた。あの経験は、今思えばありがたい。

兼田
では、10年前のその日が、沢田さんの「独立記念日」かもしれないですね。

沢田
一つのきっかけだったことは確かですね。井上さんには、そういう経験ある?

井上
大学進学で上京した時だと思います。これまで住んできた場所や人間関係と関わりを絶つということではなく、新しい世界で自分なりに頑張ってみよう! と前を向いていたと思います。

沢田
確かに、実家を出るってのは、否応無く「独立」につながるよね。兼田さんは?

兼田
まだ、しっかりとした「独立記念日」といえる日はないですが、ターニングポイントといえる日は、高校生のときの夏の甲子園予選で大敗した時ですかね。

井上
大敗ですか?

兼田
小さいころから野球をやってきて、それこそ、毎晩素振りして、実家が農家だったので、雨の日も農機具倉庫とかで素振りして頑張ってきたんですけど、あっさり負けてしまいました。対戦相手も、当時の甲子園常連校で「ミラクル宇部商」とか呼ばれていた宇部商業高校で。

沢田
おぉ、宇部商! 門外漢の俺でも名前は知ってるぞ。

兼田
「なぁに、相手も同じ高校生」と思って臨みましたが、実際は、圧倒的な力の差を感じました。「えー、あのコースをそこに打っちゃうの!?」みたいな。世界の広さを見せつけられた感じでした。

沢田
そんなに違うもんなんだ!?

兼田
ええ、そりゃあもう。次元が違いました。

井上
それまでの練習を頑張っていた人ほど、キツいと言うか、傷ついちゃいそうですね。

兼田
確かに負けて悔しいのは悔しいんですが、妙に吹っ切れたというか、一区切りついたな、と実感したんです。当時の仲間と会うと、その時の話は出ますし、今ではいい思い出ですね。

沢田
なるほど、負けた相手が宇部商なら、胸張って言えるもんね。

井上
「大敗」みたいな嬉しくない出来事も、独立のきっかけになるんですね。

沢田
ならば、今後、例えば「今年は○○から独立しよう」みたいなことは、あったりします?

井上

どういうことですか?

沢田
例えばおいら、「ランキング」とか「点数」から独立しようと思ってるの。

井上
ますます、どういうことですか(笑)?

沢田
いや、「ランキングとか点数とかでしか評価出来ないのって、つまらんな」と思ってさ。仕事柄ある程度は関わらざるを得ないけど、自分が見たいもの、食べたいもの、行きたいとこ、そんなことぐらい他人の価値観ではなく自分で決めよう、と。

井上
確かに、本だけでなく食べ物でも映画でも、ランキング1位のものが必ずしも自分に合ってるとは限りませんよね。

兼田
私は、独身生活から独立しよう! ですかね。独身なんだから独立してるじゃん! とも思えますが、一人だと甘えてしまう部分もありますので、誰かのために、との思いを持って、その思いで以って、自らを律したいなーと。

沢田
自分の意志だけでどうにかなる問題でもないから、大変だ(笑)。

井上
実はもう、意中の人がいたりして(笑)。

沢田
そういう井上さんの「独立」は?

井上
私は、当たり前からの独立! ですね。毎日当たり前のように過ごしていますが、いつ変化が訪れるかわからないということに、『独立記念日』を読んで改めて気づいたので、一日一日を大切に頑張りたいなと思います!

兼田
一日一日を大切にっていうのは、簡単ではなさそうですけど素敵な目標ですね。

沢田
そんな訳で、長々と語って参りましたが、最後に一つ。『独立記念日』にキャッチコピーをつけるとしたら?

井上
「新たな一歩を踏み出せる一冊」とか。

沢田
うん、やっぱそういう方向だよね。俺は「すぐそばにある幸せを、見落としている人たちへ」って感じかなぁ。

兼田
「昨日に負けないで。明日を信じて」ですかね。

沢田
昨日に負けないって、いいね。

兼田
負けないっていうのは、もっと掘り下げて言えば、「とらわれないで」という意味ですかね。人生、勝ちっぱなしっていう人は、ほとんどいないでしょうから。負けを経験したことのない人は皆無だと思います。でも、その「負け」から何を学び、どう立ち上がって歩んでいくかの方が大切ですし、難しいことですから。

沢田
何を以って「負け」とするかも、考え方次第で大きく変わりそうだしね。

井上
逆に「負け」から学んで前進出来れば、それはもう「負け」ではない、とも言えそうですね。

沢田
お、深い。メモっていい(笑)?



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by dokusho-biyori | 2016-11-09 09:38 | 開催中フェア | Comments(0)

住野よる最新刊

プルーフ(業界向けの見本。大抵は未校了)が届いた。

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住野よる最新刊『よるのばけもの』(双葉社¥1,400+税)

1か月後に出るらしい。
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by dokusho-biyori | 2016-11-08 22:18 | サワダのひとりごと | Comments(0)

16年11月 前編

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 東西ミステリー全作レビューの第二回目である。今回、未読のもので想像以上に楽しめたのは『白昼の死角』と『ガダラの豚』。自信を持ってオススメできる。また、『オイディプスの刃』はやや手に入りにくい。気の利いた古書店ならあるだろう。さて、では早速レビューに突入。

92位 赤江瀑『オイディプスの刃』 品切れ
 妖刀「備前次吉」、妖しくも美しい日本刀がひきおこす一家の血にまみれた悲劇を描く耽美的ミステリーである。血を求める日本刀、美しい母親、腹違いの兄弟、香水……と耽美小説のガジェット盛り盛りかつ幻想的な文体が夢を見ているような読書感覚に陥る。特に香水は物語全体に関わる重要な要素ということもあり、非常に香り高い作品に仕上がっているなんて評してみたくもなる。単なるミステリーから切り離して、文学作品としても読み応えのある作品だ。乱歩と共通する部分を感じる。

 蛇足だが、兄弟愛の描写や主人公と世話している青年との師弟愛などどことなく同性愛の雰囲気が漂う。ここにも乱歩の顔が見え隠れする。

91位 佐々木譲『ベルリン飛行指令』 新潮文庫
 一九四〇年の日独伊三国同盟が締結された直後、「零戦」がドイツに輸出されていたという「IF」のもと、日本からベルリンまで零戦を飛ばした二人のパイロットの極秘任務の顛末を描く。輸送機や輸送船は使わず、零戦そのものを操縦して英国領を突っ切るというミッションインポッシブルだ。とはいえ、飛び立つのは物語も三分の二を過ぎたあたり。それまでは輸送方法の打ち合わせ、補給地点の確保、零戦のパイロットを見つけたり、パイロットの私生活が描かれたりしている。この「静」のパートは退屈どころか、巧みな描写が1940年にタイムスリップさせ、登場人物たちとシンクロさせてしまう。そして後半の「動」のカタルシスと繋がる佐々木譲の冒険作家としての実力が存分に発揮された作品。

 102位の『エトロフ発緊急電』でもそうだったが、国家や時代に縛られない一匹狼のような男が魅力的だ。抑圧された時代の中で己の意思を持った人物にハードボイルドの魅力を感じる。

90位 山田風太郎『明治断頭台』 ちくま文庫・角川文庫
 文明開化直後の江戸と明治が入り混じる日本で起きる殺人事件を弾正台(警察の前身組織)の役人とイタコ能力を持つフランス人美女(!?)が解決する連作ミステリー。短編それぞれの完成度も非常に高いうえに、最後の章で短編全てが繋がって物語の大きな構造を見せる仕掛けがある長編ミステリーとしても素晴らしい作品。昨今流行の「どんでん返し系ミステリー」のさきがけと言うか、すでに完成型である。登場人物には歴史上の偉人も多く、事件それぞれも実際にあった出来事をベースにしていたりするので虚実ない交ぜの妙味がある。

89位 志水辰夫『背いて故郷』 電子版のみ
 仮想敵国の領海に進入し、調査するスパイ船に船員として乗り込む――、自分が紹介した仕事で友人が死んだ。事故死で処理されたその死に疑問を抱いた主人公は単独捜査を始めるが、秘密を守ろうとする勢力が行く手を阻む。独り、巨大な敵を相手に己を貫く男の姿を描いたハードボイルドサスペンス。

 エモーショナルな作品だ。主人公は確かにハードボイルドだけれども、自責の念や悔恨の情ばかり。ただ、ウジウジしているというより、その思いの強さが心の芯となり主人公を突き動かす静かな激情だ。それが志水節といわれる独特の文体が語るものだから、読者は心打たれることうけあいだ。

 真相部分ではサプライズも用意されており、ミステリーの楽しみも味わえる。

88位 高木彬光『白昼の死角』 光文社文庫
 法律を知り尽くした若き天才が法律の網目をかいくぐって犯罪を繰り返すクライムノヴェル。天才が知力を尽くして犯罪を繰り返す作品としては『DEATH NOTE』が思い浮かぶが、まさにそんな感じ。あちらは殺人、こちらは金融詐欺で犯罪の性質は異なるが、いかに敵を欺くかというトリックの小気味いいほどの鮮やかさは共通の面白さ。金融関係の法律の話が頻出するが、その部分があまり理解できなくても主人公も天才っぷりに戦慄するには支障はない。


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87位 江戸川乱歩『パノラマ島奇談』春陽文庫
 死んだ資産家の跡継ぎが自分と瓜二つなのを良いことに、死者に成りすまして遺産を横領した男が自分の理想郷を建設する奇想浪漫。

 久々に再読して新たに感じたことが二つ。一つは成りすまして遺産を相続するという主人公の犯罪計画が倒叙ミステリーとして十分面白いこと。計画を練るところから実行、そして破綻までのプロセスは倒叙ミステリーの構造そのもの。この小説は倒叙ミステリーだったのかと(いまさら)気づかされた。もう一つは男が建設する「パノラマ島」が非常に魅力的であるということ。はじめて読んだ時はそうでもなかったが、改めて読んでみると自分も訪れてみたくなる魅力がある。海底トンネルとか水族館ではもう実現されているし、再現不可能ではないはず。USJあたりに期待しよう。

86位 連城三紀彦『夜よ鼠たちのために』 宝島社文庫
 トリックの名手が惜しげもなくアイディアを使いまくる傑作短編集。これは長編にしてもいいのではないかというトリックばかり。当然、全ての短編の完成度が高い。個人的なお気に入りは「過去からの声」「奇妙な依頼」。こんな凄いアイディアを短編で出されちゃあ後世の作家が可哀想になる。

 連城作品の魅力は最後のツイスト、跳躍の意外性にある。見事に発想の盲点を突いてくるので毎回あっと驚かされる。この醍醐味を十分に味わわせてくれる一冊だ。

85位 逢坂剛『カディスの赤い星』 講談社文庫
 世界的なスペインのギター職人から依頼された「人探し」。PRマンの主人公は少ない手がかりをもとに依頼されたギタリストを探し始まるが、それはやがてスペイン本土で起こりつつある大きな事件へと繋がっていく……。

 上下巻あわせて1,000頁超す大作で単なる人探しはないだろうと思っていたら、予想を超えて物語が海を越える広がりを見せた。前半はPRマンの仕事ぶりや人探しの様子を描きつつスペイン編の伏線を張っていたのだ。それが最後のある「意外な真相」まで関係するのだから驚いた。

 主人公の人物造形も魅力的だ。どんなにピンチに陥ってもジョークを飛ばす器のでかさどいうかふてぶてしさというか、とにかく冒険小説の主人公にふさわしい「かっこよさ」を備えている。

 本筋とは関係ないが、カルメンの話題が頻出するので読んでいる途中からカルメンを聞きたくなる。

84位 殊能将之『ハサミ男』講談社文庫
 美少女を殺してその首にハサミをつきたてる連続殺人鬼「ハサミ男」は次の標的を定め、偵察している最中に何者かにその標的を殺されてしまう。しかも被害者にハサミを突き立てる自分のやり方を真似て。「ハサミ男」は単独で犯人を探り始める……。問題は「ハサミ男の模倣犯は誰か」と「ハサミ男は誰なのか」の二点。それぞれ意外な真相が待ち受けているが、正直現在ではありふれた真相の感じが否めない。今この作品を読むとするなら、後世に書かれた有象無象の「叙述トリック」には無い鮮やかなミスリードと、含みのあるラストだろう。ともあれ、ネタばれ食らってないのであれば一読の価値ある傑作であることに変わりない。

83位 中島らも『ガダラの豚』 集英社文庫
 アフリカ呪術研究の第一人者、大生部多一郎。著作がベストセラーになり、テレビでの受けもいい彼はテレビの企画でケニアの呪術師に会う旅に出ることになる。そこには予想以上の力を持つ大呪術師と、思わぬ人物がいて……。日本とケニアで繰り広げられるサスペンスをユーモラスな筆致で描いたエンターテインメント大作。

 この小説の何が凄いかというと、オカルトと科学の成分バランスがしっかりとれていて、相反する二つ要素の魅力を一層引き立てているところだ。心理学やトリックで似非オカルトの種明かしをしながら物語のベースには科学には説明できない超自然的な力が蠢いている……、「現実もこうなのかも」と思わせるバランス感覚だ。余談だが、オカルト要素と科学要素をミックスしたゲームで『流行り神』というのがあるが、似たものを感じた。



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 友人と久々に会って話をする時、まるで息をするかのように高校時代の話が出てくる。それは高校の同級生だったり、幼馴染だったりと様々だが思い出話の一つとして何故か高校時代の話が持ち上がるのだ。実に不思議なものである。

 けれども振り返ってみれば確かに高校時代は(色んな意味で)濃い日々を送っていたと思う。特にわたしは女子校というある意味閉鎖的空間だったからなのかもしれない。

 いやまあ何が言いたいのかって、ようは高校時代ってある意味青春よねと。多感な時期で色んな人と関わって色んな感情を渦巻いてと、知らず知らずと忙しない日々だったのではないか。青春の定義など知ったこっちゃないが、全部引っくるめて青春なんじゃないかと。そんな青春を詰め込んだ本が『ベンチウォーマーズ』だ。

 クラス対抗駅伝、通称〝 落伝 〟に選ばれた者は受験に失敗すると言われている。高校三年間のうち一度でも選ばれると失敗するという謎のジンクス。だから到底誰もやりたがらない。そんな中選ばれたのは、バレー部エース(現在リハビリ中)の朔、バスケが好き(ただし父親が厳しい)な康太、運動部のマネージャー(自分のことが大っ嫌い)な伊織、ちょっと太った(原因:自分に甘い)勇樹、練習時間が少ない(アルバイト三昧)恭子。この五人である。

 さてこの字面だけ見ると、なんとも平凡なレールに敷かれた物語のようにみえる。だがそんな主人公たちには様々か問題を抱えているのだ。

 一人目の朔はバレー部エースでありながら怪我を負いただいまリハビリ中。練習を見ながら自分に出来る作業をこなすのは、部活に熱中していた人なら分かるだろうが相当キツイことだ。自暴自棄にだってなる。

 バスケ少年な康太はバスケが上手くなくても大好き、だが父親が厳しい性格な為あまりいい顔をされていない。康太を見ていると上手いと好きというのは違うものなのだと痛感する。父親との対立も思春期あるあるだ。

 自分が嫌い故に誰にでも愛されるような仮面を被る伊織。どれだけ外見が可愛くても中身が可愛くなかったら、まさしく見た目詐欺。それでも憎めないのは嫌いな自分を隠してまで好かれたい、その人間らしさはいっそ好きだ。

 自分に甘い勇樹は少し自分を見ていてつらい。どうしても楽な方に逃げようとして、そしてその度に自分に言い訳をしてどんどん辛くなっていく。

 諸事情によりバイト三昧な恭子は背の高い女の子。本当は可愛いものとかも好きだが、彼女は伊織とは別に自分を殺し目の前のことだけに一直線。

 一見バラバラに見える五人だが連ねて見ていくと、みんながみんな歪で未熟で。葛藤を抱え「自分なんて」と思っている。自分を卑下するような、ネガティヴな言葉はきっと無意識に皆使ってしまう。読んでいると「そんなに卑下しなくていいんだよ」と思う以前に「自分も使ってるわ……むしろ分かるわこの気持ち」となるマジック。

 ただのスポーツ青春小説と侮ることなかれ。これに加えさらにだ、みんな大好き(?)恋愛要素も少しばかりある。悲しかな、最後に恋したのなんていつだろうと目が遠くなる私であるがなんとも言えない純粋な感情に「んんんん」と言葉にならない言葉が出てくる。誰と誰、とは言わないがとても可愛らしい淡い感情は、話の流れに違和感を指すことなく自然に、あたかも最初からあったかのように馴染んでいる。ただ泥臭いだけではなく淡く、そしてどこか爽やかな後味だ。

 彼らの駅伝もとい青春の一ページ、そして誰もがきっと経験したことのある感情がぎっしりと詰まっている。彼らの人生はまだまだ途中ではあるが、そんな彼らをどうか最後まで見届けてほしい。歪なピースがぴたりとはまる瞬間をどうかご覧あれ。また今作は第十二回酒飲み書店員大賞を受賞した。この場を借りて祝福の言葉を。おめでとうございます!



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 お蔭さまで好評を博している「うしろ読みで行こう!」フェアですが、実はその選書の際に、絶版或いは品切れで、泣く泣く削った作品が幾つかありました。今月は、それら入手困難な小説がいつか復刊されることを祈りつつ、その名作ぶりをラストシーンと共に紹介してみます。

『レッド・オクトーバーを追え』(トム・クランシー/井坂清[訳] 一九八五年 文春文庫)
 ソ連の最新鋭原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」が、潜水艦ごとアメリカに亡命を企てる。それを察知したソヴィエト海軍は、レッド・オクトーバーを拿捕、或いは撃沈しようと、総力を挙げて追撃する。ところが、その光景を衛星からの赤外線写真やら何やらで見れば、大量のソ連艦艇がアメリカに向けて進撃しているようにしか見えない訳で、「すわっ、戦争か!?」と慌てふためき、迎撃態勢を整えるアメリカ海軍。このままでは大西洋の真ん中で第三次世界大戦の幕が切って落とされることになりかねない。しかし、CIAの情報分析官ジャック・ライアンただ一人は、レッド・オクトーバーの意図を正確に読み取っていた……。

 冷戦真っ盛りの頃に書かれた作品で、強く正しく自由なアメリカと全体主義的で抑圧的なソ連の対決、という構図は当時のステロタイプ。とは言え、音だけが頼りの潜水艦戦の緊張感や、断片的なデータをつなぎ合わせて正解を探る情報戦のスリルは、今読んでも特筆もの。

 主人公ライアンは飛行機が大の苦手で、任務で止むを得ず搭乗する時は、まんじりともせずに脂汗を流すのが常。そんな彼が、米ソ両大国の正面衝突を回避すべく不眠不休で奔走した後、幼い娘が待つ我が家へ帰る為にボーイングの座席に収まる場面で、この物語はそーっと幕を下ろす。

《 機が雲を抜けて日光の中に出たとき、彼はそれまでに一度もやらなかったことをやっていた。生れて初めて、ジャック・ライアンは飛行機の中で眠ったのである 》

 ライアン、お疲れ様(笑)。

『ハマボウフウの花や風』(椎名誠 一九九一年 文藝春秋)

《 町の中に入るまでの間、草むらの中にハマボウフウの花があるのだろうか、ということがすこし気になった。見つけてみようかと思ったが、でもよく考えてみると、それがどんな姿をしているのか、赤石の日記にあったヘタクソな絵の記憶以外、水島はまったく知らない花と草なのであった 》

 主人公の水島が青春時代を過ごした海辺の町を十数年ぶりに訪れたのは、当時仲が良かった友人――アメリカに渡って犯罪を犯し、刑務所に出たり入ったりしてやさぐれていった赤石という名の親友――が、かつての恋人=吉川美緒に宛てた手紙を届ける為だった。

 水島を主人公にした青春小説であるとも言えるし、赤石と美緒の恋愛小説であるとも言えるし、中年の男女が自らの青春時代に決別する物語であるとも言える、と思う。当時さんざん目にしていた筈のハマボウフウを、全く思い描けないという点が、何かを象徴しているような気がします。

 六つ収められた短編の第一話「倉庫作業員」も、温かいラストで全力で推したい。

『黄泉がえり』(梶尾真治 二〇〇〇年 新潮社)

《 その瞬間、義信はマーチンが言いたかった真意が理解できたような気がした。しかし、風が吹き、花びらが義信の眼の前を舞ったとき、その真理は閃きのように、飛び去ってしまっていた 》

 熊本で死者が甦る現象が多発。死んだ当時のままの姿で戻って来る大勢の人々に、周囲は途惑い行政は混乱する。しかし、次第に分かってきたのは、甦るのは「もう一度会いたい」と強く強く思われていた人たちばかり。しかも、近い内にまたいなくなると言う。一体どういうことなのか?

 もう一度会えたら……とは、大切な人を亡くした誰もが願うことだろう。それが不意に、まるでアンコールのようにして叶う。だけれどもそこで交わされるのは、今度こそ最後の最後だと覚悟した上での会話と抱擁。ラストの数十ページは「想いよ、伝われ!」と強く願わずにはいられない。

 梶尾真治の代表作だと思う。



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『オイディプスの刃』赤江瀑 ハルキ文庫 9784894567023 ¥760+税

『ガダラの豚』中島らも 集英社文庫
①9784087484809 ¥490+税
②9784087484816 ¥570+税
③9784087484823 ¥505+税


『カディスの赤い星』逢坂剛 講談社文庫 
上巻9784062756402 ¥730+税
下巻9784062756419 ¥800+税


『白昼の死角』高木彬光 光文社文庫 9784334739263 ¥1,143+税

『ハサミ男』殊能将之 講談社文庫 9784062735223 ¥750+税

『パノラマ島奇談』江戸川乱歩 春陽堂文庫 9784394301523 ¥800+税

『ハマボウフウの花や風』椎名誠 文春文庫 9784167334055 ¥408+税

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『ひきこもり・ニートが幸せになるたった一つの方法』伊藤秀成 雷鳥社 9784844137085 ¥1,200+税

『ベルリン飛行指令』佐々木譲 新潮文庫 9784101223117 ¥890+税

『ベンチウォーマーズ』成田名璃子 メディアワークス文庫 9784048667838 ¥650+税

『山田風太郎明治小説全集 7 明治断頭台』山田風太郎 ちくま文庫 9784480033475 ¥1,100+税

『黄泉がえり』梶尾真治 新潮文庫 9784101490045 ¥629+税

『夜よ鼠たちのために』連城三紀彦 宝島社文庫 9784800231734 ¥730+税

『レッド・オクトーバーを追え』トム・クランシー/井坂清[訳] 文春文庫
上9784167275518 下9784167275525 各¥619+税




⇒後編に続く
















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by dokusho-biyori | 2016-11-04 10:23 | バックナンバー | Comments(0)

16年11月 後編

⇒前編から続く

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 今回はおふざけ無しで書かせてもらいます。
 いやいや、毎回ふざけてないけどね。真面目も真面目、大真面目ですよ。
 ということで、今回は津田沼店でちょっと話題になった『ひきこもりニートが幸せになるたったひとつの方法』を紹介します。

そもそも、若い人達は知らないかも知れないけど、ニートという言葉は2004年あたりから使われるようになった、割と最近できた言葉なんです。

Not in Education, Employment or Training.

この頭文字を取って〝 NEET 〟(ニート)。
働いてなければニートというわけでもなく、一応日本では、15歳~34歳までの非労働力人口のうち、通学、家事を行っていない人を指すみたいです。へぇ~( ^ω^ )

 フリーターでも無職でもプータローでもなく、働いたら負けかなと思っている、基本的に家族に寄生するのがニート。なので引きこもりを併発してしまうのだそう。

 そんなニート達が幸せになれるたったひとつの方法って凄い気になりません?

 そうそう、私の弟くんも社会に出て立派に働いておりますが、会社以外では完全に引きこもりです。薄暗い部屋で可動式ベッドに横たわり、プレイステーションVRを装着し、頭と体を動かしています、その姿は現代に舞い降りたX-MENのようです。足下を這いずり回るルンバはさながら主を守らんとする近未来兵器に見えなくもない。徹底した引きこもり精神、恐るべし。

 話は逸れましたが、ニートでも引きこもりでもプータローでも無職でも、ちょっとでも救いになるような本であると期待して、紹介させていただきました。



編集後記
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連載四コマ「本屋日和」
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11月のイベントカレンダー
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by dokusho-biyori | 2016-11-04 10:21 | バックナンバー | Comments(0)