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素晴らしき【穴】文学

 「穴文学」なるジャンルに分類されるべき本が、日本中に多数存在することを、弊店文芸書担当兼『読書日和』のイラスト&四コマ担当の西尾が突きとめました。その詳細をここに発表致します。恐らくは本邦初公開です。「素晴らしき【穴】文学」フェア、ご堪能下さい。
 
 まずは店頭展開写真から……なんですけど、これ俺、トライポフォビアでかなり苦手なんだよな。
 
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『砂の女』安部公房
 
『屋根裏の散歩者』江戸川乱歩
 
 
 
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『世界でいちばん美しい洞窟、魅惑の石窟』MdN編集部
 
『ゼロからわかるブラックホール』大須賀健
 
 
 
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『穴屋でございます』風野真知雄
 
『穴』フランツ・カフカ 長谷川四郎 マクシム・ゴーリキー
 
 
 
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『洞窟オジさん』加村一馬
 
『穴 Holes.』ルイス・サッカー 幸田敦子/訳
 
 
 
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『洞窟探検入門』エリック・ジッリ 本多力/訳
 
『穴』ジョゼ・ジョヴァンニ 岡村孝一/訳
 
 
 
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『ひかりごけ』武田泰淳
 
『覗くモーテル観察日誌』ゲイ・タリーズ 白石朗/訳
 
 
 
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『穴の本』ピーター・ニューエル 高山宏/訳
 
『ろくべえまってろよ』灰谷健次郎 長新太
 
 
 
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『穴殺人 1』裸村
 
『なんたってドーナツ』早川茉莉
 
 
 
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『穴』原宏一
 
『穴おやじ』飛騨俊吾
 
 
 
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「おーい でてこーい」(『ボッコちゃん』所収)星新一
 
『むしくいさま』もうひとつの研究所
 
 
 
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『客の多い穴』もうひとつの研究所
 
『激安食品の落とし穴』山本謙治
 
 
 
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『洞窟ばか』吉田勝次
 
『深い穴に落ちてしまった』イバン・レピラ 白川貴子/訳
 
 
 
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by dokusho-biyori | 2017-03-24 09:47 | 開催中フェア | Comments(0)

本をつくる仕事

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『VIVA!! カッパン』アダナ・プレス倶楽部
 
『青い鳥文庫ができるまで』岩貞るみこ
 
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『本ができるまで』岩波書店編集部
 
『出版の冒険者たち。』植田康夫
 
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『みすず書房旧社屋』潮田登久子
 
『江戸の出版事情』内田啓一
 
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『ボン書店の幻』内堀弘
 
『クローバー・レイン』大崎梢
 
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『本好きの下剋上 第1部』香月美夜
 
『重版未定』川崎昌平
 
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『装幀の余白から』菊地信義
 
『西洋の書物工房』貴田庄
 
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『本づくりの匠たち』グラフィック社編集部
 
『らくだこぶ書房21世紀古書目録』クラフト・エヴィング商会、坂本真典
 
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『おかしな本棚』クラフト・エヴィング商会
 
『書物の近代』紅野謙介
 
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『本の顔』坂川栄治+坂川事務所
 
『紙つなげ!』佐々涼子
 
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『本づくり』じびきなおこ、山本隆太郎、野村保恵
 
『あしたから出版社』島田潤一郎
 
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『ミステリ編集道』新保博久
 
『日本でいちばん小さな出版社』佃由美子
 
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『圏外編集者』都築響一
 
『翻訳出版編集後記』常盤新平
 
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『清く正しい本棚の作り方』(TT)戸田プロダクション
 
『美しい書物』栃折久美子
 
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『江戸の出版』中野三敏
 
『“ ひとり出版社 ” という働きかた』西山雅子
 
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『小説王』早見和真
 
『最近、空を見上げていない』はらだみずき
 
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『歪笑小説』東野圭吾
 
『重版出来!』松田奈緒子
 
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『舟を編む』三浦しをん
 
『校閲ガール』宮木あや子
 
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『リケイ文芸同盟』向井湘吾
 
『本の雑誌風雲録』目黒考二
 
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『手で作る本』山崎曜
 
『たのしい編集』和田文夫、大西美穂
 
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by dokusho-biyori | 2017-02-26 22:31 | 開催中フェア | Comments(0)

第53回文藝賞受賞 町屋良平『青が破れる』&町屋良平がリスペクトする作品フェア

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『青が破れる』町屋良平
 
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『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ/御輿哲也 訳
 
『青い脂』ウラジーミル・ソローキン/望月哲男、松下隆志 訳 
 
 
 
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『田紳有楽・空気頭』藤枝静男
 
『海辺の光景』安岡章太郎
 
 
 
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『抱擁家族』小島信夫
 
『ホリー・ガーデン』江國香織
 
 
 
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『OUT』桐野夏生
 
『ピアニストが見たピアニスト』青柳いづみこ
 
 
 
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『サマー・オブ・パールズ』斉藤洋、奥江幸子
 
『坑夫』夏目漱石
 
 
 
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『もものかんづめ』 さくらももこ
 
『伝奇集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス/鼓直 訳
 
 
 
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『枯木灘』中上健次
 
『野川』古井由吉
 
 
 
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『あるきかたがただしくない』枡野浩一
 
『中尾太一詩集 』中尾太一
 
 
 
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『巨匠とマルガリータ』ミハイル・アファナーシエヴィチ・ブルガーコフ/水野忠夫 訳
 
『弓と竪琴』オクタビオ・パス/牛島信明 訳
 
 
 
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『地図集』董啓章/藤井省三、中島京子 訳
 
『ペドロ・パラモ 』フアン・ルルフォ/杉山晃、増田義郎 訳
 
 
 
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『女が嘘をつくとき』リュドミラ・ウリツカヤ/沼野恭子 訳
 
『エクリチュールの零度』ロラン・バルト/森本和夫 林好雄 訳
 
 
 
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『ラカンの精神分析』新宮一成
 
『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス/木村栄一 訳
 
 
 
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『雨月物語』上田秋成/高田衛、稲田篤信 訳
 
『源氏物語 第1巻』紫式部/大塚ひかり 訳
 
 
 
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第54回「文藝賞」原稿募集 (主催=河出書房新社)
 
 
 
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by dokusho-biyori | 2017-02-04 09:50 | 開催中フェア | Comments(0)

出し抜け企画・原田マハ『独立記念日』座談会 前編

御用とお急ぎでない方は、さぁお立ち会い!

原田マハさんと言えば、『楽園のカンヴァス』を筆頭に、
『カフーを待ちわびて』とか『キネマの神様』とか『永遠をさがしに』とか、
今年2016も『暗幕のゲルニカ』とか『リーチ先生』とか、
良作傑作を連発していて代表作を一つに絞るのが難しいくらいな訳ですが。

ではそのマさんの『独立記念日』という短編集は、皆さん、ご存知ですか?
年齢も職業も様々な二十数人の女性たちの新しいチャレンジを描いた連作で、
これが、読めば誰もが勇気を貰える素敵な作品!

その『独立記念日』が、この度、装いも新たに大重版されまして、
これを機に、発売元のPHP研究所の二人プラス不肖・沢田が
作品の魅力を存分に語り合いました。

読書日和の出し抜け企画、『独立記念日』座談会、はじまりはじまり。

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沢田
さてお疲れ様です。本日お集まり頂いたのは、三人で原田マハさんの連作短編集『独立記念日』(PHP文芸文庫)の魅力を語り合おうと。

井上
自社本の中でも、特に好きな作品の一つです。

沢田
私もこないだ初めて読んで、なんだこの傑作は! と。書店員として、こういう本はもっと世に知らしめねばならん、と。

兼田
そうまで言って頂けると、編集者冥利に尽きます。

沢田
まぁそんな訳で、まずは軽く自己紹介から。

井上
PHP研究所第一普及本部の井上明日香と申します。簡単に言えば営業職で、丸善津田沼店さんも担当させて頂いております。本日は宜しくお願い致します。

兼田
PHP研究所文藝出版部の兼田将成と申します。この度の『独立記念日』の編集を担当致しました。担当した作品の魅力を編集者自らが語る機会などそうそう無いので、本日は嬉しい反面、おこがましいような気もします。

沢田
そして私、丸善津田沼店の沢田史郎が、進行役も務めさせて頂きます。宜しくお願い致します。
早速ですが、装丁が変わりましたね。

兼田
はい。ゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」という作品です。原田マハさん曰く「大好きなゴッホの作品の中で、もっとも明るく美しい一点を、『独立記念日』の表紙に選びました」とのことです。

沢田
透明感のある青が売り場で映えそうだ。

兼田
「花咲くアーモンドの木の枝」は、ゴッホが、自分の弟に子供が誕生したことがきっかけで描かれた絵画です。「新しい命の誕生」「再生」といった意味が込められています。

井上
様々な立場の女性たちが再スタートを切る『独立記念日』に、まさにぴったりですね!

沢田
で、まずは未読の方の為に、この作品の大雑把な説明が要ると思うんですが。

井上
作中、とある編集者がまさに『独立記念日』という書籍を担当するくだりがありますが、そこでは《 会社とか家族とか恋愛とか、現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集 》と言ってますね。

兼田
文庫の表4(裏表紙)には、こんな紹介を入れました。
《 恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失……。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る――。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集 》
 
沢田
では、その24の短編の中で、特に印象に残ったのは?

井上
16話目の「おでき」です。

沢田
喫茶店でバイトする大学生の話だ。

井上
地元から大学進学のために上京していたり、私と共通した点が多くて、自分のことを思い出しながら読みました。

沢田
あ、地元どこなの?

井上
私、広島県出身なんです。東京に行きたい! と意気込んで大学進学の際に一人で上京してきたのですが、何か辛いことや悲しいことがあると故郷にいる家族のもとに帰りたくなっていました。

沢田
帰るところがあるって、いいよね。「おでき」は、一人で東京に出ていった次女を遠くから見守る母親の姿が、描写は殆ど無いのに読者に想像させるよね。あれが凄いなぁと思った。なんか、さだまさしの『案山子』を彷彿させられた。
♪ 元気でいるか 街には慣れたか 友だちできたか 寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る~
って、歌わせんなよ(笑)。兼田さんの好きな短編は?

兼田
やはり「幸せの青くもない鳥」でしょうか。この短編は、半分以上が、私の実体験がベースになっているお話なので、思い入れが強いですね。

沢田
え、マジで!? どういうこと?

兼田
北関東のとある町の社会人バスケットボールチームの監督さんをスポーツ・ノンフィクション作家の先生と訪問取材することになったんです。それで、その日の午後、駅に着いて、監督のご自宅にうかがう住宅街の中で、その作家の先生が、「兼田さん、肩にインコがとまってますよ!」って。

沢田
何だそりゃ(笑)。

兼田
「えっ!?」って自分の肩を見たら黄色いインコが! もうびっくりでしたよ。驚きのあまり「ワッ」っと追い払ってしまったんですが、何度追い払っても私の肩に戻ってくるんですよ。そうこうしているうちに監督さんのお宅に着いてしまい、肩に乗せたまま「はじめまして、ご連絡差し上げたPHP研究所の……」とご挨拶しました。

井上
マンガみたいですね(笑)。

兼田
もう、監督さんは、本当に「コイツ何?」って顔をしていましたね。

沢田
そりゃそうだろうね(笑)。

兼田
事情を説明したのち、一旦、監督宅で預かろうかという話も出たんですが、「止まった場所で放せば、インコも飼われていた家にとんで帰るのでは?」ということになり、私が放しに行ったんです。で、せっかくだから記念に、左肩のインコを携帯のカメラで写真に撮ろうって(笑)。

井上
何の記念ですか(笑)。

兼田
そしたら携帯の液晶画面の中に白い軍手がパッと伸びてきて――。「うちのインコです。どうしてあなたが?」と男性に声をかけられました。なんとその方が、インコの飼い主だったんです! なんでも会社を休んで朝から探していたそうです。

沢田
マンガみたいだ(笑)。

兼田
聞けば、同居していたお祖母さんが、朝布団を干そうとしたら、籠に布団が当たって、インコが逃げたらしいんですね。もう、お孫さんが泣いて泣いて仕方がなかったそうで、お父さんであるその男性は朝から探しまわっていたとのことでした。

沢田
お孫さん、喜んだろうねぇ(笑)。

兼田
インコを飼われていたご家族とは今でも年賀状のやり取りがありますし、あの黄色いインコが私の肩に止まった翌日に、弊社刊『利休にたずねよ』(山本兼一 著)が直木賞を受賞したという吉報が舞い込んだので、「あれは幸せの黄色いハンカチならぬ、幸せの黄色いインコだったんだね」と今でも編集長と語り合っています。

井上
本当に、「幸せの青くもない鳥」ですね

兼田
「雪の気配」も好きな短編のひとつです。

沢田
「雪の気配」は、バーテンとしてのキャリアをスタートさせる女性が、人生をカクテルになぞらえる場面があるじゃないですか。

兼田
《 人生、甘くない。苦いし辛いし酸っぱいし、けっこうとんでもない。でも、そういう味をちょっとずつブレンドするからこそ、美味しくなるのよね 》という部分ですね。

沢田
そうそう、それ。いいセリフですよね。

井上
沢田さんは、どの短編がお好きなんですか?

沢田
この短編集、つまらない話が一つも無いから難しいんだけど、頭から読み進めて最初に「あれ!? この本、傑作かも」と思ったのは「真冬の花束」だなぁ。

井上
イジメが絡む、結構、重苦しいお話ですよね。

兼田
主人公は高校の教師で、担任するクラスで一人の女子生徒がどうもイジメの標的になってる気配がある……という、かなり難しい立場ですね。しかも、自分自身も子どもの頃にイジメに遭った体験があるという……。

沢田
イジメられていた中学生時代の回想シーンで、14個のつぼみを持つ菊の花が、或る日いっぺんに開く場面。通勤の車内で読んでて、ズシンと響いた。《 ただそれだけのことだったのに、私は涙した。小さなつぼみが開いただけなのに、私の世界はその瞬間に変った。そんな瞬間が誰にだって訪れる。それは真紀にも等しく訪れるのだ、と教えたかった 》って、ここだけ抜き出しても未読の人には何のことだか分からないだろうけど、読みながら主人公と一緒になって、真紀に向かって声援を送っていた。

兼田
一応、未読の方向けに説明すると、真紀というのが、主人公が担任するクラスでイジメられているっぽい生徒ですね。

沢田
その真紀ちゃんが、主人公にメールするじゃない、武者小路実篤の詩の解釈をめぐって。その何度目かで主人公が《 『正解』思わずつぶやいた。ついでに小さくガッツポーズまでしてしまった 》っていうここの場面で、おいらも本当に小さくガッツポーズしたくなったよ。「ヨッシャ!」って。真紀ちゃん、頑張れ! って。


⇒後編に続く

















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by dokusho-biyori | 2016-11-09 09:39 | 開催中フェア | Comments(0)

出し抜け企画・原田マハ『独立記念日』座談会 後編

⇒前編から続く
 
 
兼田
好きな場面と言えば、私は「空っぽの時間」の中の、ラストシーンが好きです。《 楽しみじゃない? 一から始められるなんて。すごいじゃない? 誰にも頼らないなんて 》という言葉に、連載の原稿をいただいた時、ぱっと目の前が明るくなるような感覚を覚えました。

井上
失業保険を貰いながら次の道を探ってる元同僚に、主人公が言うセリフですね。

沢田
こういう、価値観の大逆転みたいなのって、この作品集のテーマの一つだと思うんです。災い転じて福と為すっつーか、人間万事、塞翁が馬みたいな。

井上
なるほど、そうかもしれないですね。
私は「おでき」の中の、《 特効薬はたぶん、故郷にあるんだ 》というセリフがとても印象に残っています。
実家が東京の友達に「地元(故郷)があるっていいよね」と言われるたびに、「いやいや、実家が東京なの羨ましいよ」と思っていましたが、『独立記念日』のこの箇所を読んで、「故郷があってよかったなあ」という気持ちになりました。これも一つの、価値観の逆転ですよね。

沢田
そう言われて、ふと思ったんだけど、同じ「価値観の逆転」でも2種類あることに気がついた。一つは今井上さんが言ったみたいな、「隣りの芝生は青いと思ってたけど、振り向いて見れば自分の庭も捨てたもんじゃないかも」っていう、何て言うか、他人との比較の上の話。

兼田
第1話の「川向うの駅まで」などは、その典型ですね。川向うの街は、自分が住む町に比べて、なんてオシャレであかぬけているんだろう、と。

沢田
もう一つは完全に自分の中で閉じてる価値観で、例えば第2話の「月とパンケーキ」なんかはこれですね。亭主に先立たれて子どもも亡くして、私は幸せとは無縁なんだって。

井上
どちらのケースも、実際はそうとは限らないと言うか、この先に幸せなことが起こるかも知れないのに、自分で勝手に諦めちゃってる感じなんですよね。

兼田
ただ、生きていく上で悪いことが重なると、「自分はどうせ幸せにはなれない」という気になってしまう時も、誰だってあると思うんです。

沢田
或いは、今がツラいと、周囲の人たちが皆ラクで幸せで楽しげに見えてきたり。「よその会社はボーナスいっぱい貰えていいなぁ」とかね。

井上
そんな時にこの本の主人公たちは、ちょっとしたきっかけから「あれ? 私、それほど不幸じゃないのかも」と気付くんですよね。

沢田
そのきっかけってのが、些細な――ここで言う「些細な」ってのは「周りから見れば」という意味で、本人にとっては決して「些細」ではないのかもしれないけど、とにかく思いがけないことから、自分の未来をもう一度信じてみる気になる、そのプロセスが本当に素敵だし、読者を勇気づけてくれる小説だと思う。

兼田
壁にぶつかって、視野狭窄に陥っているような時にも、一歩下がって眺めれば、その壁は案外低いかもしれませんし、実は壁の端っこに穴が空いていてそこから突破できる、なんてことが見えてくるかもしれませんしね。

井上
あ、深いですね。メモしておきます(笑)。

沢田
第6話「転がる石」で、色々行き詰ってしまった主人公に心療内科の先生が助言しますけど、あれと一緒ですね。
《 『案ずるより産むが易し』ってことわざ、知ってますか? こんなことしたら、こうなっちゃうんじゃないか。こう言ったら、こう言い返されるんじゃないか。そう考えてなかなか行動できない。けど、思い切ってやってみれば、けっこう想像もしなかったほうに、物事っていうのは転がっていくものですよ 》
 
兼田
そういう意味では、この本は頑張ってる女性だけでなく、例えば新生活が始まって新しい職場や学校に戸惑いを覚えている人たちにも、是非読んで貰いたいですね。

井上
私はこの本を読み終えたとき、中高時代の友人に読んでもらいたいなと思いました。

沢田
と言うと?

井上
この間久しぶりに中高時代の友人数名と会う機会があったのですが、みんな様々な悩みを抱えていることに驚いたんです。学生時代は同じ環境で生きていて、抱える悩みも友人関係とか勉強とか似たようなものだったのに、進学したり就職したりそれぞれの道を歩くようになって、みんな様々な壁にぶつかりながら頑張っているんだなあと感慨深くなりました。

沢田
太宰治が「東京八景」の中で、こんなこと言ってるよ。《 人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか 》
 
兼田
辛い思いや悲しい経験も、「あの日があって良かった」と後からそう振り返ることができるようになれば、きっとその日が「独立記念日」に変わって行くのかもしれませんね。

沢田
お、井上さん、メモりなよ(笑)。

兼田
あれ? 話していて思ったけれど、ということは「過去は変えられない」なんて言いますが、確かに、起こった事象を変えることはできないけれど、それをどう受け取るかは変えることができますね。

沢田
あ、それは実感あるわ。もう10年以上前の話だから言っちゃうけど、めちゃくちゃ売れる大規模店から、もっとこじんまりした、売り上げ規模で三分の一程度の店に異動になったことがあって、当初は凄く気落ちしたし、何しろ売り上げ冊数も金額も一気に小さくなったから張り合いが無くって、モチベーションをどこに見つけたらいいか分からなくって苦しんだんだ。

井上
沢田さんにもそんな時代があったんですね。驚きました。

沢田
うん。でも、今はあって良かったと思ってるの。

兼田
それはまたどうして?

沢田
いや、大型店に勤務してる頃のおいら、店の集客力で売っているだけなのに、それを自分の力だと勘違いしまくっていて、自分のことをめっちゃ仕事が出来る書店員だと思ってたの、いやマジで(笑)。だけど、異動先の店では、やっぱりその店の身の丈でしか売り上げを上げられない訳じゃん。
「なんだ、俺が凄いから売れてると思ってたけど、あれ全部、俺の実力じゃなくて店の集客力じゃんか」
って、その時気付いた。あの経験は、今思えばありがたい。

兼田
では、10年前のその日が、沢田さんの「独立記念日」かもしれないですね。

沢田
一つのきっかけだったことは確かですね。井上さんには、そういう経験ある?

井上
大学進学で上京した時だと思います。これまで住んできた場所や人間関係と関わりを絶つということではなく、新しい世界で自分なりに頑張ってみよう! と前を向いていたと思います。

沢田
確かに、実家を出るってのは、否応無く「独立」につながるよね。兼田さんは?

兼田
まだ、しっかりとした「独立記念日」といえる日はないですが、ターニングポイントといえる日は、高校生のときの夏の甲子園予選で大敗した時ですかね。

井上
大敗ですか?

兼田
小さいころから野球をやってきて、それこそ、毎晩素振りして、実家が農家だったので、雨の日も農機具倉庫とかで素振りして頑張ってきたんですけど、あっさり負けてしまいました。対戦相手も、当時の甲子園常連校で「ミラクル宇部商」とか呼ばれていた宇部商業高校で。

沢田
おぉ、宇部商! 門外漢の俺でも名前は知ってるぞ。

兼田
「なぁに、相手も同じ高校生」と思って臨みましたが、実際は、圧倒的な力の差を感じました。「えー、あのコースをそこに打っちゃうの!?」みたいな。世界の広さを見せつけられた感じでした。

沢田
そんなに違うもんなんだ!?

兼田
ええ、そりゃあもう。次元が違いました。

井上
それまでの練習を頑張っていた人ほど、キツいと言うか、傷ついちゃいそうですね。

兼田
確かに負けて悔しいのは悔しいんですが、妙に吹っ切れたというか、一区切りついたな、と実感したんです。当時の仲間と会うと、その時の話は出ますし、今ではいい思い出ですね。

沢田
なるほど、負けた相手が宇部商なら、胸張って言えるもんね。

井上
「大敗」みたいな嬉しくない出来事も、独立のきっかけになるんですね。

沢田
ならば、今後、例えば「今年は○○から独立しよう」みたいなことは、あったりします?

井上

どういうことですか?

沢田
例えばおいら、「ランキング」とか「点数」から独立しようと思ってるの。

井上
ますます、どういうことですか(笑)?

沢田
いや、「ランキングとか点数とかでしか評価出来ないのって、つまらんな」と思ってさ。仕事柄ある程度は関わらざるを得ないけど、自分が見たいもの、食べたいもの、行きたいとこ、そんなことぐらい他人の価値観ではなく自分で決めよう、と。

井上
確かに、本だけでなく食べ物でも映画でも、ランキング1位のものが必ずしも自分に合ってるとは限りませんよね。

兼田
私は、独身生活から独立しよう! ですかね。独身なんだから独立してるじゃん! とも思えますが、一人だと甘えてしまう部分もありますので、誰かのために、との思いを持って、その思いで以って、自らを律したいなーと。

沢田
自分の意志だけでどうにかなる問題でもないから、大変だ(笑)。

井上
実はもう、意中の人がいたりして(笑)。

沢田
そういう井上さんの「独立」は?

井上
私は、当たり前からの独立! ですね。毎日当たり前のように過ごしていますが、いつ変化が訪れるかわからないということに、『独立記念日』を読んで改めて気づいたので、一日一日を大切に頑張りたいなと思います!

兼田
一日一日を大切にっていうのは、簡単ではなさそうですけど素敵な目標ですね。

沢田
そんな訳で、長々と語って参りましたが、最後に一つ。『独立記念日』にキャッチコピーをつけるとしたら?

井上
「新たな一歩を踏み出せる一冊」とか。

沢田
うん、やっぱそういう方向だよね。俺は「すぐそばにある幸せを、見落としている人たちへ」って感じかなぁ。

兼田
「昨日に負けないで。明日を信じて」ですかね。

沢田
昨日に負けないって、いいね。

兼田
負けないっていうのは、もっと掘り下げて言えば、「とらわれないで」という意味ですかね。人生、勝ちっぱなしっていう人は、ほとんどいないでしょうから。負けを経験したことのない人は皆無だと思います。でも、その「負け」から何を学び、どう立ち上がって歩んでいくかの方が大切ですし、難しいことですから。

沢田
何を以って「負け」とするかも、考え方次第で大きく変わりそうだしね。

井上
逆に「負け」から学んで前進出来れば、それはもう「負け」ではない、とも言えそうですね。

沢田
お、深い。メモっていい(笑)?



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by dokusho-biyori | 2016-11-09 09:38 | 開催中フェア | Comments(0)

超カッコイイ! 東欧文学

こういう真面目なフェアも、たまにはやるのです。選書に際しては、下記目録の1ページ目に掲載した松籟社の『東欧の想像力~現代東欧文学ガイド』に大変助けられ、また大いに勉強になりました。個人的には、旧ユーゴスラビアの作家ダニロ・キシュの作品にチャレンジしてみようと思っています。また恥ずかしながら、アゴタ・クリストフの『悪童日記』も未読なので、これを機に読んでみたいな、と。

正直言って、飛ぶように売れるフェアだとは思いませんし、普段も店の片隅でひっそりと並んでいる自己主張の薄い作品たちですが、フェア台が空いたときぐらい、スポットライトを当ててあげたいな、と。

それにしても、作家の名前、覚えにくいにも程があるぞ東欧文学(笑)。

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『東欧の想像力~現代東欧文学ガイド』奥彩子、西成彦、沼野充義

『亡命文学論』沼野充義

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『文学の贈物』小原雅俊

『ポケットのなかの東欧文学』飯島周、小原雅俊


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『夢宮殿』イスマイル・カダレ/村上光彦 訳

『バルカン・ブルース』ドゥブラヴカ・ウグレシィチ/岩崎稔 訳

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『この世の美しきものすべて』ヤロスラフ・サイフェルト/飯島周、関根日出男 訳

『墓地の書』サムコ・ターレ/木村英明 訳

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『剃髪式』ボフミル・フラバル/阿部賢一 訳


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『二つの伝説』ヨゼフ・シュクヴォレツキー/石川達夫、平野清美 訳

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『黄金時代』ミハル・アイヴァス/阿部賢一 訳

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『カレル・チャペック短編集』カレル・チャペック/田才益夫 訳


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『ロボット』カレル・チャペック/千野栄一 訳

『冗談』ミラン・クンデラ/西永良成 訳

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『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ/千野栄一 訳

『愛されえぬ者たち』アルノシュト・ルスティク/野口忠昭、羽村貴史 訳

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『北は山、南は湖、西は道、東は川』ラースロー・クラスナホルカイ/早稲田みか 訳

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『悪童日記』アゴタ・クリストフ/堀茂樹 訳

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『ふたりの証拠』アゴタ・クリストフ/堀茂樹 訳

『第三の嘘』アゴタ・クリストフ/堀茂樹 訳

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『女がいる』ペーテル・エステルハージ/加藤由実子、ヴィクトリア・エシュバッハ・サボー 訳

『ぼくらが女性を愛する理由』ミルチャ・カルタレスク/住谷春也 訳

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『息のブランコ』ヘルタ・ミュラー/山本浩司 訳

『ソラリス』スタニスワフ・レム/沼野充義 訳


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『スタニスワフ・レム短篇ベスト10』スタニスワフ・レム/沼野充義 訳

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『ヴィトカツィの戯曲四篇』スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェーヴィチ/関口時正 訳

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『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ/沼野充義 訳

『逃亡派』オルガ・トカルチュク/小椋彩 訳


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『ブリキの太鼓』ギュンター・グラス/池澤夏樹 訳

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『南瓜の花が咲いたとき』ドラゴスラヴ・ミハイロヴィッチ/山崎洋 訳

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『若き日の哀しみ』ダニロ・キシュ/山崎佳代子 訳

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『砂時計』ダニロ・キシュ/奥彩子 訳

『メデイア』クリスタ・ヴォルフ/保坂一夫 訳


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『ホルンの最期』クリストフ・ハイン/津村正樹 訳

『サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆き』トーマス・ブルスィヒ/粂川麻里生 訳


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by dokusho-biyori | 2016-05-25 09:15 | 開催中フェア | Comments(0)

江戸川乱歩賞60年

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by dokusho-biyori | 2014-08-14 00:18 | 開催中フェア | Comments(0)