読書日和

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「読書日和」備忘録

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悪意のあるエノキ茸

また、またまた、またまたまた、中山智幸『暗号のポラリス』を読んでいる訳で、もう5度目ぐらいかな。同じ本を何度も読むと言うと時々びっくりされるんだけど、音楽とか映画とか、みんな好きなものは何度も味わうでしょ? それと一緒。

で、年末は優先的に読まなきゃいけない新刊が続いたせいで『ポラリス』を通読する時間が確保出来ず、隙間の時間に気に入った場面だけ拾い読みして我慢してたんだけど、漸くまとめて一気に読む時間が作れたという訳。

読む度に発見があるのがこの小説の凄いとこで――だからこそ、何度も何度も読みたくなるし、何度読んでも飽きない訳だが――今回も紹介したい名場面を一つ発見したものの、ちとまとまらないのでもう少し頭の中で熟成させてからにしようと思う。

その代わり、と言ってはなんだけど、一か所、面白い表現をご紹介。ユノ少年が出会った――と言うか見かけた――意地悪そうなコンビニの店員の、その外見の描写。曰く
「背がひょろりと高く丸顔で、悪意のあるエノキ茸といった容姿だった」
悪意のあるエノキ茸(笑)!

こんな風に中山さんの文章は、比喩・暗喩が凝っているのに難解ではなく、思わず膝を打ちたくなるような表現が多いので、これから読む人は、そんなところも楽しんでみてたもれ。試しに、もう一か所だけ引用してみようかな。或る人物が口げんかしてる場面。相手にキツい言葉を浴びせつつも、途中で自信が無くなってゆく、その心情描写。曰く
「威勢よくぶつけはじめた言葉が失速して、最後にはすがるような調子になるのを彼女も自覚した」
解る~でしょ? こういうことあるでしょ? 中山さんの文章には、この「解る~」が沢山出て来るの。だから、リアリティがあるし、登場人物が身近に感じられると言うか、作り話には思えないと言うか。

そんな訳で、中山智幸『暗号のポラリス』は名作だから読まないと損だよ、という話でした。
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by dokusho-biyori | 2016-01-09 01:06 | サワダのひとりごと | Comments(0)