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16年01月 前編

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 忍者というのはどうしてこれほど子どもの心を惹き付けるのか。幼い頃、背に棒切れをさして野原を駆けた記憶は無いだろうか。折り紙で手裏剣の折り方を必死に覚え、友達と投げ合った記憶、そしてそれを教師に咎められた記憶は無いだろうか。かつてどれほど多くの子どもが忍者に憧れを抱いたことか……。

 いや、忍者は子供だけのものではない。世にはあらゆる忍者コンテンツがあふれている。ほぼ一年前、漫画『NARUTO』の最終巻が刊行され話題を呼んだ(全巻大人買いした人もいるのでは?)。同時期、『ニンジャスレイヤー』が深夜のTV画面を跳梁跋扈していた。古今東西あらゆる忍者があらゆるメディアで人々を楽しませてきた。
 ムロン、小説も例外ではない、ということで今回は忍者小説をフィーチャーだ。

 先ずは2015年版「この時代小説がすごい!書き下ろし文庫」で見事2位になった風野真知雄「くノ一秘録」シリーズから。オビに「くノ一VSゾンビ」とデカデカと謳っていることからトンデモ本の匂いを嗅ぎ取ってしまう人がいるかもしれない、奇異といえば奇異な小説だ。内容はオビの通り、可憐なくノ一がゾンビと化した戦国武将と戦う、「バイオハザード 戦国版」。主人公が華麗な体さばきでゾンビをバッタバッタと斬り斃す様はまさにミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスそのものである。とはいうものの、単なる下位互換では終わらないのはやはりそこに忍者がいるからだろう。歴史の裏で暗躍し、摩訶不思議な術で敵を翻弄する忍者、彼らが主人公であればこその魅力がそこにある。つまり、ゾンビ大名がいたのではないかというifが妙な整合性を持ち始め、忍者の目を通して一種の裏歴史を垣間見ているような気になるのだ。時代小説家ならではの、ifを楽しむ忍者小説といえるだろう。

 お次は山田正紀『桜花忍法帖 上下』だ。こちらは打って変わって忍者が繰り出す様々な忍術対決を楽しむ小説だ。SFでデビューした著者らしく、荒唐無稽な忍術に疑似科学的な説明が添えられ、そのメカニズムがこと細かく説明された挙句にそれが悲哀に満ちた物語のラストを導くのだから恐ろしい。忍者小説のガジェットである忍術が物語に溶け込むどころでなく物語そのものを形づくる種なのだ。といくら抽象論を展開したところで想像もつかないだろう。この点は読んで確かめてもらうしかないのだが、もうひとつこの小説の優れたところは何と言っても著者特有のカッコいい文章運びであろう。上巻のオビに引用された「されば皆みなさま オン立派に 死に候え」の台詞が出た時の痺れるような感覚! そして物語の中で反復される桜花のイメージの美しさたるや! この文章を体感するだけでも一読の価値はあろう。

 と熱く語ったものの、『桜花忍法帖』の最大の読みどころは忍者同士の忍術合戦であることは間違いがない。人間離れした術を扱う忍者同士の対決、血肉沸き踊る戦いこそが小説の要であるのだが、それは最後に紹介する作品までとっておかねばなるまい。なぜならばその作品こそ『桜花忍法帖』が本歌取りした「元ネタ」でありながら現在のエンターテインメント作品の素地を作った偉大なる作品であるからだ。

 それが山田風太郎『甲賀忍法帖』である。1958年から「面白倶楽部」という雑誌で連載が開始されたこの作品は徳川三代将軍を決めるため、甲賀・伊賀各10名が死闘を繰り広げるという非常にシンプルな筋書きでありながら後世のクリエイターたちに多大なる影響を与え、超えられぬ先駆者として尊敬と畏怖の念を抱かれている怪物的な忍者小説だ。例えば己が必殺技に名をつける行為はこの小説から始まったのではないかとされているし、そもそも非現実的な技を以って敵と戦う物語自体この小説の前にはなかったのではないかとまで言われている(あくまで個人の意見なのであしからず)。ただ、これだけでは単なる古典的名作、エポックメイキング以外の価値を持たない作品になってしまう。ところが、この小説が偉大であるのは発表から半世紀以上たった今でも全く古さを感じさせないところだ。先に挙げた二つの小説にも忍術は登場した。しかし、『甲賀忍法帖』は超人的な殺傷能力を持つ忍術を扱う忍者が出るだけでない。中には全く役に立たないと思われる忍術であっても、対する相手の忍術によっては絶大な効果を発揮して金星を挙げてしまう、まるでじゃんけんのような組み合わせが十VS十の戦いに何通りも組み込まれているのだ。これこそまさに「意外な展開」「予測不可能な物語」であろう。ここまで絶妙な忍術を考案して組み合わせることができた作品はほぼないだろう。『甲賀忍法帖』が傑作といわれるゆえんはここにある。

 かくも素晴らしき作品である『甲賀忍法帖』、実は近年アニメ化した。タイトルを改め『バジリスク』となって放映された。せがわまさきの手によって漫画にもなっている。もしかしたらパチンコのほうでご存知の方がいるかもしれない。とまあ、つまりは『甲賀忍法帖』への入り口はいたるところにある。是非、この偉大なる忍者小説に触れていただきたい。そして、気に入ったのであれば今回紹介した「くノ一秘録」シリーズでも『桜花忍法帖』にでも、もしくは膨大な数が遺された山田風太郎の「忍法帖シリーズ」に手を出すのも悪くはないだろう。(文藝春秋 販売促進チーム 安江拓人)


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 今月は〝(笑)〟を使わない。

『僕の声は届かない。でも僕は君と話がしたい。』の著者・近藤崇さんは、今年の10月23日に自宅で高熱から意識を失い敗血症性ショックと診断され、やっと落ち着いてきた11月、突如一時心肺停止になったそうです。その後、脳死という状態ではありませんが、極めて重篤な状態で現在も意識は戻っていないのです。一日も早い回復を願ってやみません。

 この書籍は元がんセンターの医師であり将来を有望視されていた近藤さん(当時28歳)が、2011年、職場の忘年会の日に脳梗塞で倒れ、聴覚、言葉を失い、半身麻痺になりながらも、リハビリで動くようになった右手を使い、Facebookで発信し続けた文章やそこに至るまでの経緯などが記されています。本の存在を知ったのは、twitterだったように思う。そして文章が綴られているFacebookを見たおぼえがある……。
 気がついたら涙を流しながら読んでいた。

 なぜなら私の父も54歳で脳梗塞を発症。63歳に肺がんで亡くなるまで、半身不随でほぼ車椅子生活だったからだ。近藤さんが綴った「倒れた本人の気持ち」を読みながら、私の父もこんな気持ちだったのだろうかと思うと涙がとまらなかった。
 54歳の父でも働き盛りでまだこれから人生長いのに……と思った。だが私の父は話すことも出来たし、リハビリによって、装具をつければ長い距離は無理だけれど歩けるようにもなった。だから結婚式で一緒にバージンロードを歩く事も出来た。

 近藤さんはそんな父の約半分の年齢で発症。そして、話せない聞こえない笑えない……それ以外にも色々な障害を抱える。こんな一文がある。
「僕はモニターのコードを首に巻き、自殺しようと考えました。もう生きていたくない、怖すぎる、そう思ったからです。ではなぜ僕はいきているのか? それは自殺を思いとどまったからではありません。身体が動かないので自殺することも出来なかったのです。本当に悔しかった。心が張り裂けるくらいに悔しかった。今でも思い返すと涙が溢れて来ます。」
……私の父が倒れた時、母と弟は泣かなかった。彼らは冷静だった。このまま父が死んでしまったらどうしようと私一人が大泣きした。でも一番泣きたかったのは父だったのだ。そうなのだ。身体が不自由でも生きていて欲しいとまわりが思っていても本人は違うのだ。父も入院中「こんな身体なら生きていたくない」と言っていた。

 近藤さんは当初耳が聞こえない事を周りがわかっておらず、ある日近藤さんのお母さん が気付き「あんたまさか耳が聞こえないの?」と紙に書いて訊いてくれたそうだ。「これで外の世界の一員になれる。私の数多ある障害が治癒したわけでは決してない。何一つ変化してない。ただ歩けない私が心の中でジャンプしてこう叫んだ。《生きてて良かった!!!》」そう書かれている。しかしその後の人生全てを変えるものとなる宣告を医療面接で受ける事になります。「この先一人で歩ける様にならない。一生車椅子」。リハビリをする時は一人で歩いている自分を夢見て頑張っていた近藤さんは「何のためにリハビリしてんだ? 何のためにリハビリしてんだ!!」「歩けない、一生介護。(略)何で生きてるんだろう」

 しかし全く動かなかった身体が、リハビリを経験してほんの少しだけ動くようになったことで、近藤さんの考え方にも変化が出てくる。そしてFacebookを使いはじめた事で新たな夢が出来たのだ。Facebookにあげた文章の書籍化。それが今回私が読んだまさにこの本である。
 読んでいるとどうしても父と重なり、涙なしでは読めなかったけれど読んで良かった。生きる希望や夢を持つ事はやはり重要なことなんだなと近藤さんに教えてもらった気がする。

 最後に。父の肺がんは見つかった時にはすでに心膜まで転移していて、手術はできない状態だった。余命宣告半年。そして娘が2歳のある日、電話が鳴った。「お父さんが……! 御飯食べさせてる途中に息しなくなった……! 今から救急車で病院行く……!」と慌てた声の母からの電話……病院に着いた時、廊下で母は泣いていた。

 それまで感動するTVや映画などを見て泣くのは家族で私と父だけで、母が泣いているのを見たことがなかった。母の親(私にとっての祖父母)の葬式の時にも泣いていなかった。その母が泣いていた。それを見て父が亡くなったんだな、と病院の廊下でわかった。もちろん父が亡くなった事は悲しかったけれど、天国でもう車椅子じゃなく元気に歩く事が出来ているかな? 良かったね。と最後に声をかけた。

 今回、書籍の感想よりも父の話が中心になってしまいすみません。著者の近藤崇さんの意識が回復する奇跡がおこりますように。そして明るく振る舞っているけれど、きっと怖いはず……読んでいないと思うけれど同い年の友人Kさんの乳がんが完治しますように。(正樂公恵)


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「人間とは後悔する生き物である。それこそが、サルと我々とを隔てる一番の差異である」かつてフランシス・ベーコンはそう喝破した……というのはウソだけど、日々、色んな後悔を重ねながら僕らはみんな生きている。「ふりむくな ふりむくな うしろには夢がない」と寺山修司は言うものの(これは本当)、あの時あんなことしなきゃよかったといった類の悔恨を、誰もが幾つも抱えて暮らしている。

 それを削除出来る機械が在る!? という夢のような設定から誕生したのが、『削除ボーイズ0326』だ。

 小学六年生のグッチとハル、コタケは、遊びも勉強もいつも一緒。1年前の事故でハルが車椅子の生活になっても、変わらずにツルんでいる仲良し三人組。その三人が夏休み、ひょんなことからデジカメ様の機械を手に入れる。マニュアルによると、①ダイヤルで時間をセットして、②対象者を画面に映してロックした後、③対象者自身が「DELETE」ボタンを押すと、④その時間の対象者の行動が削除されるって!?

 そんなバカなと疑いつつも、一度はやってみたくなるのが人の性。ましてや、好奇心いっぱいの小学生なら尚のこと。ついさっき爪切りで深爪してしまった時間を試しに「DELETE」してみると、なんとビックリ! 深爪が無くなってる!? ってか、まだ爪切ってないことになってる!!
 それから暫くの間は、例えば気に入らない担任の頭を上履きでひっぱたいてその直後に「DELETE」する、などといったイタズラを楽しんでいたグッチたちは、しかし、次第にこの装置の威力に気付き始める。即ち、これさえあれば悩みも不安も後悔も、みんな無かったことに出来るじゃん! と。そして「DELETE」ボタンを押しまくる。より良い現在になると信じて。

 と、ここで少々シミュレーション。例えば、あなたが転んで膝をすりむいたとします。傷口を消毒したあなたは、絆創膏を切らしていることに気付いて、近所のドラッグストアに買いに行くかも知れない。その途中で知り合いに会って、来週のランチを約束をするかも知れない。財布を拾って交番に届けることになるかも知れないし、交通事故を目撃して一一九番通報するかも知れない。あなたが絆創膏の最後の一個を買った為に、別の誰かは買えなかったかも知れないし、ドラッグストアの店員は、絆創膏を一ダース余計に発注するかも知れない。
 転んだというたった一つの事実を削除するだけで、それらがみんな変わってしまう。要するに一つの出来事が世の中にどんな影響を及ぼすか、その全てを把握することなど僕らに出来る筈もなく、起点となる「出来事」を削除した場合に「影響」の方がどう変化するのかなんてやってみなければ分からない。当然、望んでいた方向に変化するとは限らない。億万長者になっているかも知れないけれども、下手すりゃ自分が死んでる可能性だって否定出来ない。そして、一度「DELETE」した過去は、二度と元には戻らない。

 ここで思い出すのが、畑野智美さんの『ふたつの星とタイムマシン』。タイムマシンを使って悔いの残る過去を変えようとする主人公を、タイムマシンの開発者が静かに諭し諌める場面。曰く「過去を変えたら、もっと悲惨な未来になるかもしれない。今が一番いいと思っていた方がいいです」。

 けれど、そう助言してくれる人などいないグッチたちは、良かれと思って過去を変える。新たな現在が理想とは程遠いことに落胆してまた試す。すると今度は、別なところで平衡が崩れる。やがて彼らは、身を持って知る。自分たちは過去を変えたのではなく、壊してきたのだと。人が時間を操ろうなど、思い上がりも甚だしいのだと。
 物語の最終盤。世界を元の姿に戻す為に、グッチたちが下す苦渋の決断。それはあたかも、何があっても今この胸で脈動する友情だけは削除させないという、彼らの約束であり宣言でもあると、僕には思えて仕方がない。

 最後に蛇足を。この作品、冒頭に3ページほどの「プロローグ」があるんだけど、これ、最後に読んだ方がいいんじゃないかなぁ。と言うのは、先にこれ読んじゃうと、勘のいい人なら物語の途中で結末が見えちゃうと思うんだよね。なんで、こんな順番にしたんだろう?(沢田史郎)


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やることなすこと実用書!
読んで使って役立てよう!
得する実用書の使い方を、担当・比嘉が伝授します!!

『図解 ワイン一年生』小久保尊(著) 山田コロ(イラスト)
 ワインと聞くと私はなんとなく「大人のお酒」をイメージしますが、皆さんはどうでしょう? ソムリエほど精通している必要はないかも知れませんが、でもちょっとした知識を持っていた方が、ワインをより身近に感じられるかも知れません。そんな入門書にはこの1冊! ブドウを品種ごとに擬人化、豊富なイラストで解りやすい!
 実は著者の小久保さんとイラストの山田さんにお会いしたのですが、ナント、弊店を日常的にご利用下さっているとのこと。それだけでも親近感! なのですが更に、商品に挟み込まれたスリップの裏面に「世界一敷居の低いワイン本です。よろしくおねがいします」と、お二人から書店員へのメッセージが(しかもイラストつき)! お蔭でこちらはやる気まんまん(笑)。お酒の本のコーナーでど~んと展開しておりますので、是非チェックしてみて下さい。

『総武線さんぽ』散歩の達人MOOK
 黄色い電車でお馴染み(朝のラッシュ時の激混みでもお馴染み)の「総武線」です。私も子どもの頃からのメイン路線です。「錦糸町」「市川」「船橋」、そして勿論「津田沼」も紹介されてます。本書片手に 〝 さんぽ 〟 しませんか?

『sweet特別編集 占いBOOK 2016』
 やっぱりこの時期は占い本ですよ! 本書には色々なタイプの占いが載ってます。星座別だったり、占星術だったり。個人的には、一度お会いして占ってもらったゲッターズ飯田さんの袋綴じがおすすめです。だって、「結婚は3年以内」って言ってくれたから(笑)。さぁ果たして皆さんの2016年の運勢は?

津田沼店 実用書 2015年売上BEST3

『聞くだけで自律神経が整うCDブック』小林弘幸 アスコム 9784776208365 ¥1,200+税
 自律神経の乱れから来るあらゆる病状がCDを聞くだけで簡単に予防できる! 全9曲入り! 詳しい曲の解説も掲載!

『日めくり まいにち、修造!』松岡修造 PHP研究所 9784569820781 ¥1,000+税
 日々頑張る人はもちろん、心が折れそうになっている人、次の一歩を踏み出す勇気がほしい人を、松岡修造がありったけの本気の言葉で応援します。

『フランス人は10着しか服を持たない』ジェニファー・L・スコット/神崎朗子[訳]
大和書房 9784479782995 ¥1,400+税
 パリのマダムが教える上質な生き方。満足いく食事のために間食しない、ワードローブは10着、ミステリアスになる、教養を高める……。


⇒後編に続く

by dokusho-biyori | 2015-12-25 17:12 | バックナンバー